社長就任、そして妊娠出産。自身の試行錯誤を経てワーママをサポート~株式会社ノヴィータ 三好怜子さん

WEBマーケティング、システム開発、人材サービスを手掛ける「株式会社ノヴィータ」。代表取締役の三好怜子さんは、社長就任後間もない時期に妊娠と出産に直面しました。その経験をもとに、ノヴィータでは時間や場所に制約があっても仕事が続けられる勤務体制を整えています。今回は、そんな三好さんのインタビューです!
「ワ-ママを、楽しく」というテーマで同社が運営しているメディア「LAXIC(ラシクhttps://laxic.me/)」についても伺いました。
 

三好怜子さんプロフィール
職業:株式会社ノヴィータ代表取締役社長
お子さんの年齢(2021年8月末現在):5歳
居住地:東京都

事例ありきでつくっていく柔軟な働き方

―御社では働きやすい環境をどのように整えていらっしゃいますか?
 
一番特徴的なものとしては、働き方の組み合わせが20種類近くあることでしょうか。5年前までは多くがフルタイム出社という働き方をしていました。そこから、もっと柔軟な働き方をしたいというメンバーとその上司が、どうすればそれが可能になるかを話し合い、最適なものを組み合わせていくと、20種類近くになっていったというのが現状です。基本的に事例ありきで仕組みを作って運用してみて、ここは少し変えたほうがいいかなと、また新しい規定を増やすこともありますね。その試行錯誤が、働きやすい環境となっている大きな理由かなと思っています。
 
―何か課題に感じていらっしゃることはありますか?
当事者に合わせて作っていくので、環境づくりに関する課題はあまりないと思います。運用しながらもっと最適なものはないか、今も常に探しているような状況です。ただ、新しい仕組みをつくっていくので、労働基準監督署に相談したら「それは過去にない事例なのでこちらも分かりません」と言われたこともありました(笑)。前例がないものを運用する労務部門や現場のメンバーは大変だとは思いますが、最近は彼らからも「だったらこういうのもありじゃないですか」といった提案が出てくるようになりました。私一人で正解を探さなくていいので、非常に心強いなと思っています。

オフィスで勤務中の三好さん


―全社リモートワークに移行したそうですね。
私が週2回くらい出社で、多分一番多いですね。週1回くらい出勤するのが2~3人で、あとはみんな在宅で仕事をしています。
新型コロナが蔓延する前の2020年1月の時点で、すでに全社員の1/4、10名ほどは地方で働いていました。入社時から在宅という人、本社から地方へ転居してリモートワークするようになった人、さまざまなケースがあります。その1/4の社員が各チームに1人は在籍していたため、リモートワークのツール系はかなり揃っていました。それで、新型コロナ感染拡大の兆しが見えた2020年2月、試しに在宅勤務へ切り替えてみることにしたんです。1カ月ごとに運用に問題点がないか見ていく中で、効率性も差支えなさそうでしたので、同年9月に全社リモートワークに切り替え、オフィスもコンパクトにしました。
 
―一部だけでも先駆けてリモートワークをしていたことで、問題なく業務ができているのでしょうか。
おっしゃる通りですね。フルリモートワーカー第一号が出たのは2017年のことです。あるメンバーが地方に転居することになり、当初は辞めるという話だったのですが、本人によく聞いてみると、「辞めたくはないが今の職種・働き方だと辞めざるをえない」ということだったんです。こちらとしても必要な人材でしたので、東京にいる間にまずは、在宅勤務から試してみることにしました。転居する半年くらい前から、週に2~3回在宅で仕事をしてもらい、出社しないとできない業務を洗い出しました。その結果、部分的に業務を変えたら、フルリモートでもできそうということになったんですね。以来、少しずつフルリモートのメンバーが出始めたのです。それに伴い、数年かけてソフト面もハード面も整えてきたので全員リモートワークに切り替えるトライアルが可能だったと思います。
 
―以前のフルタイム出社の時と、社内の雰囲気は変わりましたか?
フルリモート1人目は、やっぱりマイノリティでした。少しずつリモートワーカーが増えて、今はもう全員在宅となりマジョリティとなりました。最初はフルリモート社員がサポートされる側で、周囲がサポートする側という固定された関係性だったと思うんです。それがいろんなメンバーが多様な働き方をする中で、互いに補い合う関係構築ができてきました。今振り返ると、本当に1人目が大変だっただろうなと思います。
 
―柔軟な働き方に取り組むようになった背景に、三好さん自身の環境の変化もあったそうですね。
私が2015年に社長に就任してほどなく妊娠し、2016年に出産をしました。自分自身の出産と職場復帰を経験する中で、ハード面でもソフト面でもこのままでは多分普通の人は復帰できない、復帰したとしても継続できないだろうと感じました。そこで、自分自身の経験をフィードバックさせながら、バックオフィスのメンバーと就業規則を整理していきました。

柔軟な働き方の実現に取り組んできた、労務・総務担当と、情報システム担当との打ち合わせ


 
―子育てしながらの社長業はやはり大変でしたか?
大変でしたね。今は5年経って私の中でもいろいろな解決策を持っていますが、当時は先ほどお伝えしたリモートワーク第一号のメンバーと一緒でマイノリティだったので。そんな中でどこまで情報を開示したらいいのかも分かりませんでした。
 
―どこまで開示したらいいかというのは、プライベートの事ですか?
そうです。やっぱり子どものことって、いない人にとっては分からない情報が多いんですよね。それで子どもがいる人といない人がお互いに遠慮してしまって、溝が埋まらないということは結構多いと思います。でも、それはもったいないことですよね。子どもが小さい頃は子連れ出勤もしていました。子連れ出勤の日は、会社のカレンダーに「三好出勤(子あり)」とか書いて……(笑)。そうすれば、子どもがいるから外出は難しいけれど社内ミーティングは可能ということがスタッフにも分かります。子育てしながら仕事をするなら、周りに遠慮させないよう配慮できているかがポイントだと思っていて、私は子どもを理由に仕事を断らないように心がけています。
 
―それぞれ抱えていえる事情は違うけれど、相手の立場も考えたコミュニケーションが重要ということでしょうか?
そうですね。私のあとに続く人は、私とは立場も置かれている環境も違うので、私がしてきたことを全てやれるとは思いません。ただ、私からアドバイスを伝える中で、これならアレンジすれば自分にも取り入れられそうということを、社員たちも実践してくれています。
 

ワーママ、ワーパパのためのメディアLAXICについて

 
―LAXIC(ラシク https://laxic.me/)を発足させた背景について教えてください。
私は2013年に結婚しました。30代前半で子どもを持てたらいいなということをぼんやりイメージしていて、インターネットで「ワ―ママ」と検索すると、後に続くサジェストワードが「辛い」となっていたんです。さらに、メディアでは保育園不足がさかんに報道されていて、ポジティブな気持ちより不安の方が強くありました。なので、自分の妊娠が分かった時は、嬉しいのすぐあとに「仕事をどうするかな」という心配がよぎったんです。それでも、周りで働いているママワーカーが試行錯誤しながら両立している姿を目の当たりにして、これだったら私にもできるかなと思えるようになったんです。そこで、これから子どもを持つ世代が、子育てと仕事の両立を前向きに捉えられるようなメディアを立ち上げようと思いました。
 
―今後取り組んでいきたいことはどんなことですか?
ママの働き方って、感覚的には5年ぐらいで変わっているんですね。LAXICを立ち上げて6年が経ち、さらにコロナ禍もあって、リモートワークなど働き方もかなり劇的に変わってきました。個人的には、LAXICを立ち上げた当時に私が気になっていた育児と仕事の両立についても、選択肢が増えて以前ほど悲観的ではなくなっているのかなと感じています。そうは言っても、働きたくても働けない人はまだまだいます。そこで、これからは働きたいママを受け入れてくれる企業さんが増えるような取り組みをしてきたいです。
 
私たちは、「実践者でもあり発信者でもある」ということを大切にしています。社内での働き方の実践およびLAXICでの取材・発信という経験をもとに「働くために必要な環境整備の支援」を行っていて、今後さらに強化する予定です。ノウハウの提供にとどまらず、環境整備を手掛ける人材の採用支援から運用までを対応していければと思っています。
 
3年ほど前からは地方活性化の視点から、地方自治体と連携して、子育てなどで時間や場所に制約がある女性に、在宅でデジタルマーケティング業務を担える人材の育成も行っています。また、LAXICから派生した事業として、パートナーの海外駐在帯同のために離職した女性向けのキャリア支援事業「CAREER MARK」を、2020年に開始しました。
 
いずれも、ライフステージの変化でキャリアを中断せざるを得なかった女性に対して、柔軟な働き方の実現を通してサポートしていきたいという思いから始めた事業です。
 

▼女性やママが働きやすい職場の実現へ 兵庫県豊岡市での雇用創出
https://www.novitanet.com/casestudy/case-toyooka.html (豊岡市との取り組み)
 
▼CAREER MARK
https://careermark.net/(他社との共同事業)

在宅勤務中の三好さん


―御社では、どのような人材を求めていらっしゃいますか?
当社は「最適と創造」というブランドプロミスを掲げています。最適と創造って、相反しているようにも見えますが、私たちは相互補完だと考えています。最適化を突き詰めた先に、今ないものは新しくつくるべきものがあると思うんです。ですから、相互補完ができるということを今年の全社のテーマに掲げています。誰だって強みも弱みも持っているでしょう。たとえ足りないところがあっても会社という一つの組織の中で補完をし合えればいいんです。自分はこれを強みにしたいという思いがある方なら、私たちは最大限サポートしますし、そういう方に来ていただけると面白いかなと思っています。
 

はたママ読者へのメッセージ

―最後に、はたママprojectの読者へメッセージをお願いします。
今は情報も選択肢もたくさんあって、逆に悩むこともありますよね。そういう時は、どうして自分は働きたいのかという欲求に、立ち返るべきだと私は思います。これを常に自問して答えられる状態にしておくこと、つまり「自分の気持ちの棚卸し」が大事だと思います。そうすれば、この先ライフステージが変化することがあっても、選ぶべき道も見えてくるはずです。場合によっては自分で選択肢をつくることもできるのではないでしょうか。本当に自分がやりたいことに対しては、人は時間も忘れて本気になれると思います。

株式会社ノヴィータ information

ママワーカーさんの記事はこちら

編集後記

社長業と子育て、聞くだけでも大変そう……と思いながらのインタビューでした。自身の経験から、後進のために柔軟な働き方ができる会社へと変えていった三好さん。「入社時とはまるで違う会社と思っている人もいるんじゃないかな」ともおっしゃっていました。そしてその視線は、社会全体の働き方の課題解決へと広がっています。ノヴィータ様の取り組みが、働きたくても働けないと悩んでいる一人でも多くの人に届くことを願っています。

SNSへのシェアをお願いします!
ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。