家族を大切にする職場風土は、トップメッセージから

自分のスキルを生かして、複数の仕事をもつ「複業」の注目度が年々高まっています。複業したい個人と、企業や自治体を繋ぐプラットフォーム「複業クラウド」を開発運営しているのが株式会社Another works。人事担当の吉川さんによると、「複業」は、ここ数年でリモートワークが一気に進んだことで、さらに受け入れられやすくなったと実感しているそうです。
30歳前後の子育て世代も多いという同社。社員の皆さんの子育てと仕事の両立スタイルや職場風土などについて、お話を伺いました。

自分の強みを生かす「複業」というワークスタイル

ー御社の事業内容について教えてください。

「挑戦する全ての人の機会を最大化する」をビジョンに掲げる、都内ITスタートアップ企業です。

2019年 9月に複業したい個人と企業や自治体を繋ぐ、総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」をリリース。ミッションである「複業の社会実装を実現する」ために、東証プライム上場企業からスタートアップ、自治体、スポーツチーム、教育機関など、業種業界問わずあらゆるドメインで複業人材の登用を後押ししています。

「複業クラウドfor Series」として、自治体向けには複業クラウドfor Publicを、スポーツチーム向けには複業クラウドfor Sportを、教育機関向けには複業クラウド for Academyを提供しています。

ー「副業」ではなく、「複業」なんですね。

複数の本業を持つという意味で、我々は定義付けています。2019年創業当時は、この「複業」という表記を使っている企業や団体は、あまりありませんでした。

当社が提唱していきたいのは、サブビジネスという意味ではなく、「本業も含めた複数の居場所で、複数の目的を達成するために行う仕事」という意味での複業です。その中でも特に、経験やスキルを活かして、自治体やスポーツ団体、企業にノウハウやリソースを還元していくというワークスタイルを持つ方が増えていると感じます。その一因は、コロナ禍によってリモートワークが進んだことだと考えています。出社を必須としない働き方と複業は、相性がいいのではないでしょうか。

子育て社員への自然な心遣いがある職場風土

ーでは、御社でのリモートワークの状況はいかがでしょうか。

週に2~3日ほどリモートで勤務する社員が多いですね。その人の状況や業務内容によって、所属部署で臨機応変に対応しています。

例えば、普段は週2~3日のリモート勤務をしていた男性社員が、第2子が生まれる際には、約2カ月間フルリモートに切り替え、奥様のサポートをしていました。

ーその方がフルリモートに切り替えた際の、社内の反応はいかがでしたか?

もう、大応援でした!これは、トップメッセージが明確な理由だと思っています。代表取締役の大林が、家族との時間は何よりも大事にしてほしいというメッセージを、常日頃から社員に発信をしています。

プライベートを全て犠牲にして働きづめになることは、失うものも多いです。そのため、代表の大林から常に仕事で成果を出すことと両立して、家族に感謝の気持ちをもって接してほしいというメッセージを発信しているのだと思います。我々も、その思いに共感して、チーム作りや組織づくりを行っています。

さらに、大林の共同創業者である取締役CDOの金は、創業当時0歳児と2歳児の子育て真っ只中でした。それも、当社の今の職場風土を作っている要因の一つかもしれません。

例えば、子育て中のメンバーが、子どものことで早退しないといけなくなった時も、すぐに誰かが、「じゃあ、私が代わりにやっておきますよ」と声をかけるように。

つい先日、社内でスポーツ大会を開催した際には、お子さんを連れてきたメンバーもいました。すると、周りの社員がそのお子さんと一緒に遊んだり、スポーツを楽しんだりしていました。

子育て世代の方々とお話しすると、そういう自然な配慮が非常にありがたく、後ろめたさも感じずにすむという声はよく聞きますね。

ー子育て中の社員にとって働きやすい会社ですね。

そうだと思います。子どもの送り迎えや行事など、家庭のライフスタイルに合わせて柔軟に働くことが可能です。リモート勤務を織り交ぜながら、積極的に子育てに参加している社員が多いです。

フルリモートを機に、生産性アップ

ーリモートワークは、コミュニケーションの課題がよく挙げられますが、2カ月間フルリモートされていた方の場合はいかがでしたか?

対面と比較すると、違いがあるのは事実です。ただ、彼が所属している開発エンジニアチームでは、フルリモートをきっかけに、テキストによるコミュニケーションが増え、結果、生産性が上がったという報告も聞いています。

これからの時代、リモートワークといった柔軟な働き方、個を尊重した働き方に対応していかなければ、組織マネジメントや採用といった面で、非常に難しくなってくるのではないでしょうか。

ー子育て中の社員にとって会社がどういう場になればよいと考えていらっしゃいますか。

第2の居場所になれば嬉しいですね。当社では、Another Radioという社内限定のラジオを月に2回開催しているのですが、以前パパさんを呼ぶ会を開催したことがあります。

「会社でパパ同士の繋がりを持ててうれしい」「子育ての悩みを共有できてうれしい」など、好評でした。若いメンバーからも刺激になったという声を聞いています。

現時点(2023年3月)では、まだママ社員はいないのですが、もし今後産休育休を取得する女性社員が出たときは、みんなでサポートできればと思っています。

子どもを育てていると、ハプニングやトラブルはつきものです。子育て中の当人が一番大変なはずなのに、職場で肩身の狭い思いをするケースも多いと聞きますが、当社は全くそういうことがないです。

互いの状況を理解し合い、何かあった時に、「大丈夫ですよ、私が後はやりますから、気を付けて行ってきてくださいね」という一声がかかる雰囲気、これが当社の特長ではないかなと思います。

女性のキャリア形成も「複業」で支援したい

ー今後御社で実現されたいことを教えてください。

ビジョン「挑戦する全ての人の機会を最大化する」

複業クラウドを通して、挑戦したいと思う人が挑戦できる環境を最大化したいですね。

ミッション「複業の社会実装を実現する」

挑戦したいと思ったときに、複業という選択肢が当たり前にある世の中を目指します。複業は転職や独立よりもハードル低く挑戦できる選択肢だと考えています。

当社では、女性のキャリア形成支援も重要なテーマだと考えています。女性が結婚や出産を望む場合、いまだ課題となっているのが仕事との両立ではないでしょうか。産休や育休をブランクと捉えられる傾向がまだまだありますが、「複業」という考え方で世界が広がると思います。

自分にどんな強みがあるのかということにフォーカスをして、キャリアを考えていくことができるからです。

女性の働き方の選択肢の一つとしても、「複業」が当たり前になる環境を作っていきたいですね。

吉川さんと、下記インタビューに登場する澤田さん(左)

編集後記

ライター・Y田

新しい働き方を提案する同社だけあって、社員皆さんの働き方や職場風土も先駆的でした。それも、企業トップが自身の働き方を省みて、「家族を大事にしてほしい」というメッセージを強く発信しているからですね。 今回インタビューに答えてくださった吉川さんは独身とのことですが、子育てと仕事の両立の大変さや、子育て中のパパ・ママの心情について、深く理解されていてすごいなと思いました。

SNSへのシェアをお願いします!
ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。