保育園からの急な呼び出しにも対応可能 育休後も家事育児と両立している私の働き方

アイレット株式会社では、ここ数年にかけて半年〜1年といった、長期で育休を取得する男性社員が増えているそうです。その火付け役となったのがエンジニアの松木さん。育休が明けた後も、在宅勤務+裁量労働制で育児と仕事を両立させています。
そんな柔軟な働き方を実現するためにいろいろな制度の整備を推進してきたのが、一児のパパでもある管理部門の清水さんです。
清水さんと松木さんに、同社の男性育休取得や働きやすい制度についてお聞きしました。
 

清水 那昭さん プロフィール

職業:管理部門
お子さんの年齢:2歳
居住地:東京都

松木 一生さん プロフィール

職業:インフラエンジニア
お子さんの年齢:長女5歳、次女2歳
居住地:埼玉県

在宅勤務で、マネジメントは「管理」から「モチベーションアップ」へ

―御社の事業内容を教えてください。
 
清水さん:システム・アプリケーションの開発、グラフィック・UI/UXデザイン制作からインフラの構築・運用までをワンストップで提供しています。
 
・コーポレートサイト


・サービスサイト

・オウンドメディア「iret.media」

 
―働きやすい環境への取り組みについて教えてください。
 
清水さん:2020年3月よりコロナ禍の影響を踏まえ、在宅勤務を推進しています。また、その影響が長期化する可能性を踏まえ、2020年10月からは在宅勤務をベースとした新しい働き方を促進し、在宅勤務率は86.9%(2022年1月時点)となっています。
それに伴い、在宅勤務の実態把握と施策への反映を目的に、社内でアンケートを定期的に実施し、1人5万円の「環境整備一時金」や毎月2万円を支給する「在宅勤務支援手当」など、継続的な在宅勤務体制に向けた制度を導入しています。また、一般に向けたワクチン接種が開始された際は、希望する社員が安心して接種に臨めるよう特別休暇制度を追加するなど、社会情勢に応じた対応を実施しています。
男性社員の育休取得率は、32%で、最近は半年や1年といった長期取得も目立ちます。
育児中社員の悩みを聞く場としてランチ会や社内で利用しているチャットツール「Slack」でチャンネルを企画し、子の看護休暇の有給化など育児支援も強化しています。
 
―在宅勤務を導入するにあたって苦労した点はありますか?
清水さん当社はエンジニア職が多く、場所を選ばず仕事ができるという条件が揃っていたんです。ですから、働く場所が自宅になったからといって、そこまで大きな支障はありませんでした。
 
松木さん:これまでは出社してのコミュニケーションがベースでした。でも出社していても、近くの人ともチャットツールを使ってやりとりをして、それにプラスして実際の会話ということが多かったんです。ですから、フルリモートになったからといって、それほど障壁はありませんね。
 

松木さんの在宅勤務環境


清水さん:マネジメントのやり方も、在宅勤務にシフトしたことで変わってきていると感じています。従来の概念でいうと、マネジメントというのは管理・監督が主でした。けれど、在宅勤務だと物理的に難しいですよね。マネジメントの役割は、モチベーションをアップさせる、困ったことが生じたときに支えてあげる、一人ひとりが活躍できる場を用意してあげるといった役割にシフトしてきているのではないでしょうか。
 
―在宅勤務に移行して1年以上たちますが、社員への働きかけ方も徐々に変わってきているんですか?
清水さん:そうですね。定期的な1on1もどんどんオンラインで実施されるようになり、私自身今となっては対面でのミーティングがちょっと恥ずかしくなってしまいました(笑)。 在宅勤務の環境に順応して、各チームでコミュニケーションの方法を見出しているようです。
 
―最近育休を長期でとる男性社員が増えているのは、何が要因なのでしょう?
清水さん:私はエンジニア職ではないのですが、エンジニアのみなさんは基本的に自分で情報をキャッチアップするのがうまいという印象を持っています。それで、自分が育児に関わる環境になった人は、積極的に育児に関する情報をキャッチしているのではないでしょうか。そして、男性の育休取得が一般的になりつつあるというのをキャッチして、それなら自分も育休を取得してみようというアクションにつながっているのではないかなと推測しています。それから、松木さんが、半年間の育休を取得したことも大きな影響を与えていると思います。アイレットが運営しているオウンドメディアで紹介して、そこから長期で取得する人が増えました。
 
松木さん:エンジニア内でメモを共有するプラットフォームがあり、そこで育休に関する自作の資料をアップするということにも取り組みました。育休とはなんぞやということから始まり、アイレットで取得するなら男性はこんな制度が使えるといったことをまとめたものです。

―すごい!松木さんがパイオニアなんですね。

半年間の育休を取ったきっかけは?

―松木さんの入社のきっかけを教えてください。
松木さん:アマゾン ウェブ サービス(AWS)の構築がしたかったということと、アイレットには自由な雰囲気と働き方があったからです。エンジニアは基本的に裁量労働制で、成果を出していれば、勤務時間を柔軟に調整できるのが一番の魅力でした。
コロナ前から、自宅で仕事をすることもありましたし、早めに上がって家族の時間を持ってからまた仕事するといったこともしていました。
 
―第二子のときに半年間の育休を取られたんですよね。
松木さん:そうです。実は、第一子のときも前の会社で半年間育休を取りました。前の会社では、男性も育休を取得する人が多かったんです。その流れで取得してみたら、育児が思った以上に大変で、これをママ1人に任せるのはかなり辛いなと思いました。それで、家事育児をできるだけ分担したいという気持ちが自然と芽生えてきて、第二子のときも迷わず取得しました。
 
―育休によって生じるブランクに対して、不安な気持ちはありませんでしたか?
松木さん:育休中は家事育児に専念しようと決めていたため、焦りなどは特に感じませんでした。ただ、半年間AWSなどの情報アップデートを行っていない状況だったので、改めて勉強していかないと、という思いはありました。育児しながら働くとなると、ずっとリモートワークが良いなと思っていたところで、在宅勤務に移行したので、助かった部分はあります。
 
―復帰後に苦労したことはどんなことですか?
松木さん:妻が育休から復帰+次女が保育園に入園するまでの間、部屋があまり広くないのでお互い気を遣ったと思います。現在は引っ越して書斎を作りましたが、それまではリビングで仕事していたので、打ち合わせのタイミングでは別の部屋に移動してもらったり、外出してもらったりもしたので、少しストレスがかかった部分はあると思います。
 
―育休取得からの復職というご自身の経験が、今のお仕事にどのような影響を与えていますか?
松木さん:もともと家事育児に対してネガティブな感情はなかったのですが、改めて家庭のことやプライベートの時間に対して考えさせられました。できるだけ子どもたちと顔を合わせる時間を長くしたいと思っています。そのために、1日の時間の使い方、仕事の進め方を考えて、いかにプライベートの時間を確保できるか常々模索しています。

お子さんに絵本の読み聞かせ


―現在の働き方のメリットと課題について教えてください。
松木さん:在宅勤務+裁量労働制のため、保育園からの急な呼び出しや、子どもを急に病院に連れていかないといけない場面などにも対応できて、大変助かっています。妻も現在は基本的に在宅勤務なのですが、急に仕事を離れることはできません。そのため、そういった突発的なことが起きた時は私が対応することが多いですね。
課題というか意識しないといけないことは、いつ仕事を引き継がないといけないか分からないので、常に仕事内容をアウトプットする必要があるということです。作業時にはSlackに内容をつぶやいていきますし、案件の内容や知見などをドキュメントにまとめています。そういったことを今までもやってきたので、育休時の引き継ぎも特に苦労した覚えはありません。
 
―今後どんな自分になりたいと思っていますか?
松木さん:家庭や子どものことを第一に行動できること、また、少し先のことも含めて考えられるようになりたいと考えています。子どもたちのフェーズに合わせて、家族でやっておきたいことを考え、それをみんなで経験していきたいですね。
また、今後そのフェーズによっても、仕事とプライベートのバランスを変化させていかないといけないと思うので、現状にとどまらずに変化できる自分でいたいと思います。
 
清水さん:私も子どもができて初めて、家事育児の大変さに気づきました。いざ自分に訪れないと想像しにくく、ともすると、「育休は仕事しなくていいから楽」と考えてしまう人もいるんですね。そういう意識が浸透してしまうと、育休をはじめとした休業制度を利用しづらい雰囲気になってしまいます。ですから、育休を取得しやすい環境を維持していくには、育休に対する理解を会社としてすすめていくことが重要だと考えています。
 
―その取り組みの一つが、先ほどおっしゃっていたチャットチャンネルなんでしょうか。
清水さん:そうですね。育休中の人やこれから育休取得を考えている人が参加して、自由にやりとりできる場になっています。
 
松木さん:私も参加しています。私の育休中には、チャットチャンネルはなかったので、参加し始めたのは育休後ですが。育休明けで困ることの一つが、チーム内に育児中の社員がいなくて育児の悩みを共有しにくいことでした。ですから、チャンネル内で思いを共有し、情報を得ることができたらとても助かります。そんなチャンネルに育っていくといいなと思います。
 
清水さん:地味な活動というか、草の根運動に近いかもしれません。ですが、こんなふうに取得している人がいるなら、自分も取っていいんだという感覚が生まれていくのが、今後男性の育休取得が増えていくためには必要です。
私も妻から言われはっとしたのが、「女性が社会で活躍していくためには男性の家庭活躍が大前提」ということ。もう、おっしゃるとおりだなと(笑)。社員のウェルビーイングのために、これからもご家族も安心できるような会社づくりに取り組んでいきたいと考えています。

編集後記

お二人とも、実際に子どもが生まれてみてはじめて、育児をしながら家事をこなすことが大変だとわかったと話していらっしゃいました。子育てに限らず、当事者にならないと見えてこないものがありますよね。
また、在宅勤務がベースになったことでマネジメントの在り方も変わってきたというお話も興味深かったです。管理ではなく、仕事への意欲をサポートするマネジメント。在宅勤務制度がうまくいくヒントがここにありそうだと感じました。

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ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。