求めているのは、プライベートや家族を大事にする人

クラウドサービスを活用したシステム開発を手掛けている合同会社アクアビット。代表社員の長井祥和さんは多忙を極めたフリーランスのSEからシフトチェンジ。リモートワークを取り入れ、プライベートも大事にできる働き方を実践しています。
働き方を変えたきっかけや、リモートワークの課題を踏まえた今後の展望などについて、長井さんにお聞きしました。

長井祥和さん プロフィール

職業:SE
お子さんの年齢:20歳、18歳
居住地:東京都
https://linktr.ee/YoshikazuNagai

スタッフの雇用を始めた当初からリモートワークを実践

―御社の事業内容と起業のきっかけについて教えてください。
クライアント企業様のシステム構築・企画・保守を行っています。2006年に個人事業主として活動を始め、2015年に法人化。2021年からスタッフの採用を始めました。現在私を含め、4人のスタッフがいます。
サイボウズ株式会社が展開する「kintone」を中心とした、さまざまなクラウドサービスを連携させながら、お客様のビジネスを加速させることが私どものミッションです。
以前は、私が企業の開発センターに常駐するかたちをとっていて、仕事も大変忙しかったんです。毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車に揺られて出勤し、夜もほぼ終電という生活を送っていて……。こんな働き方はいつまでも続けられないなという思いを抱いていました。そんなときに、kintoneに出合ったんですこれなら通勤の必要がなくなり、なおかつクライアントの業務効率化に貢献できるのではないかと考えました。
 

▼ビジネスアプリを構築するクラウドサービス「kintone」
https://kintone.cybozu.co.jp/

 
―スタッフを採用する時もリモートワーク前提で募集したのですか?
はい。募集要件にリモートワークを入れていました。応募してくれた方々は、業務内容に加えてリモートワークという点にも興味を持ってくれたのかなと考えています。ただ、フルリモートだと、メンタルケアやスキル向上という点でも問題があると思いましたので、顔を合わせる機会は、折にふれて設けるよう心がけています
 
―リモートワークのメリットと課題は何かありますか?
良いところは、やっぱり通勤時間が削減できることですよね。
ただ率直に言って、課題はいろいろとありました。まずは、業務の進捗状況が見えにくいことや価値観のずれを解消しづらいことが挙げられます。中でも一番課題となったのが、弊社の仕事はマニュアル化が難しいということです。お客様によって求めるシステムの構築要件がまったく異なるからです。
 
―そういった課題を改善する手立ては何か考えていらっしゃいますか?
プロジェクトの進捗管理、ファイル共有システム、チャットといったツールの力をもっと活用しようと考えています。それから、社内の体制が私を中心としたハブ状の組織になってしまっていたことも改善すべき点ですね。たとえばスタッフが5人いたら五芒星のように、お互いが連携しあうような関係を築いていきたいと考えています。

Cybozu Days 2021で紹介された「アクアビット」のブース

子どもが小さいときに今のような働き方ができていたなら……

―長井さんのお子さんは現在20歳と18歳とのことですが、お子さんが小さかったときはどのように子育てに関わっていらっしゃいましたか?
子どもが小さいときに、今のような働き方ができていれば、もっと子育てに関わることができたんじゃないかなと思います。
長女が小学校低学年の頃までは、私はまだ会社員をしていて、会社と家も近かったんです。ですから、仕事が終わって保育園にお迎えにも行っていましたし、運動会などの行事には皆勤賞と言っていいくらい参加できていました。ところが、独立してからは次第に忙しくなり、開発現場の状況によっては、朝早く家を出て深夜まで帰れないほどでした。次女が小学生の時期は、平日は子どもと顔をほとんど合わせない状態になってしまったんです。妻は妻で忙しくしていて、そういった家庭の状況が次女の精神面に影響を与えてしまっていました。
これはもう働き方を見直さないとダメだなと思いました。では、見直すためにはどうすればいいんだろうと。常駐の開発現場を渡り歩くのは、ある程度お金はいただけます。ですが、いくらお金を稼いでも、子どもたちがきちんと育たなければ、意味がないですよね。そういったことを考えていた頃、kintoneに出会いました。これなら現場に常駐せずにシステム開発ができるので、家族を大切にしながら仕事を続けられるのではと思ったんです。
今いるスタッフに子育て中の人はいませんが、いずれ家庭を持った時に仕事もプライベートも両立できるような環境を整えておきたいと思っています。
 
―今後、子育て中のママを雇用するというお考えもありますか?
もちろん歓迎です。最初にスタッフを雇おうと思った時、子育てのためにシステム開発の一線から引いたけれども、また働きたいと考えている方を探していたんですよ。そういう方は、知識も仕事への意欲もお持ちですから。
いま問題となっている少子化は、働き方の問題も大きいと思うんです。多忙で夜中まで帰って来られなかったら、何のために子どもを作ったの?ってなりますよね。さらに先を見ると、次代を担う子どもたちが減ったらビジネスの基盤そのものがなくなっていくわけです。ですから、子どもを社会全体で育てていける環境を整えなければ、仕事をする意味もないのではと考えています。

アクアビットで求める人材と今後の目標について

―どのような人材を求めていらっしゃいますか?
否定から入らずまずはやってみようというマインドが、システム開発の仕事において大事だと思っています。あとは、プライベートでも夢を持っている方、家族を大切にする方ですね。私は仕事だけが人生ではないと考えています。趣味に没頭したり副業をしたり、いろいろな自分の世界を持つことが、結局メインの仕事にも役立つと思うんです。
いい意味で逃げ道があるというのでしょうか。仕事で行き詰っても、プライベートで別の世界に没頭していたら思わぬ解決の方法が見つかることって、私自身よくあります。
 
―家族を大切にする人を求めているというお話もありましたが、子育てもまた、「別の世界」なのでしょうか。
そうですね。私はもう子育てから離れてしまいましたが、子育てから得たものはいっぱいあります。
先ほど言った、次代を担う子どもたちがいなかったら、社会が成り立たなくなるというのは、やはり自分で子どもを育ててみて実感したことです。
それから、人に何かを伝えるときに、自分の価値観を押し付けるとダメだということも学びました。私は本が大好きなんですが、子どもたちは全く本を読みません。これも、私が「本を読むべき」という価値観を子どもたちに押し付けてしまったからかなと、今も反省しています。
二人姉妹で、特に思春期はパパに対する態度でいろいろと苦しい思いもしてきましたが(笑)、それもすべて私の言動が鏡のように跳ね返ってきているのでしょう。そういう面でも、子育ては良い経験になっていると思います。
 
―今後の目標について教えてください。
今の日本の閉塞した社会状況を打開するために私どもができることが、システム開発です。クラウドシステムを活用してルーティンワークを楽にすることで、創造的な仕事にもっと時間を使えるようにしたい。それが多様な価値観を認め合える社会に近づく道なのではないでしょうか。会社としては、これまで受託開発をメインに行ってきましたが、今後は自社で展開するサービスも立ち上げ、クラウドシステムで世の中を幸せにするという理念を実現できる基盤を整えていきたいですね。

編集後記

多忙で子育てに関われない状況をただ嘆くのではなく、実際に働き方を変えていった行動力と決断力がすごいと感じました。何のために仕事をするのか、常に自分に問いかけていたからこそ、決断ができたのかもしれません。
クラウドシステムで世の中を幸せにしたいという、長井さんの思いが多くの人に届くといいなと思います。

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ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。