全社リモートワークへ移行して1年。ママワーカーたちが今思うこと

株式会社ノヴィータは、2020年9月に本格的に全社リモートワークに移行。それからほぼ1年が経った2021年8月末、同社の二人のママワーカーさんに語ってもらいました。
同社の働き方が変わっていく過程をつぶさに見てきた川田さんと、入社した直後にコロナ禍で在宅勤務になった磯部さん。リモートワークという働き方や自身のキャリア、育児と仕事を両立する工夫など、お話は多岐にわたりました。
 

川田優生さんプロフィール
職業:アートディレクター・デザイナー
お子さんの年齢(2021年8月末現在):4歳、2歳
居住地:東京都
ノヴィータ入社時期:2013年

磯部可奈子さんプロフィール
職業:フロントエンドエンジニア
お子さんの年齢(2021年8月末現在):4歳
居住地:神奈川県
ノヴィータ入社時期:2020年

これまでのキャリアと現在の働き方について

―現在の業務内容と働き方について教えてください。
川田さん 私はアートディレクターとデザイナーを担当しています。クリエイティブのコンセプト策定やクオリティチェック、ウェブサイトやウェブ広告、LP、バナーのデザイン制作などを受け持っています 。2017年に第一子を出産し、半年間の育休を取得して復帰。復職後は時短出社勤務をしていました。2019年に第二子を出産し、育休期間中にコロナ禍で全社リモートワークになりましたので、復職後は在宅で時短勤務をしています。

在宅勤務中の川田さん。体調不良で登園できない日は、子どもを見ながらの勤務になってしまうことも


 
磯部さん 私はフロントエンドエンジニアとして、ウェブサイトの運用や制作を行っています。今は在宅で時短勤務をしています。ノヴィータに入社したのが2020年で、入社とほぼ同時に全社リモートワークとなりました。ですから、オフィスに出社したのは3~4回と数える程度なんです。
 
―これまでのキャリアについて教えてください。
 
川田さん 大学卒業後に広告制作業界に入り、20代は主に雑誌や新聞広告、ポスター、パンフレットなどのデザインに携わっていました。30歳になったのを機に独立して、フリーランスのデザイナーになりました。これまでやってきた紙媒体のデザインだけでなく、声をかけてもらったら何でもやってみようと思い、メーカーのブランディング、イラスト、パッケージ、ショップでの販売やギャラリーのディレクションも経験しました。ノヴィータと出会ったのは、そんなフリーランス時代です。友人のつながりでお仕事をいただくことがあり、その後声をかけていただいて2013年に入社しました。
 
―2013年というと、前回インタビューに答えてくださった三好さんが社長に就任する前ですね。ノヴィータさんが柔軟な働き方ができる体制に変わっていった時期を体験されていらっしゃるのでしょうか。
 
川田さん 私は入社時にまだ前の仕事もしていた関係で週4日の出勤でしたが、他のメンバーは週5日フルタイム出社がほとんどだったと思います。社内で育休を取得したのも私が初めてでした。すでにお子さんがいる状態で入社してきた人など、働き方に制約がある人は何人かいたんですが、まだ社内では多くはありませんでした。ですから、週5フルタイム出社という皆さんとどうすればうまく連携できるのか、どこのチームでも模索している状態でしたね。
 
磯部さん 私は高校卒業後、IT業界とは無縁のサービス業界に進みました。5~6年働いて、2015年に結婚しました。その後ご縁があって、システム開発会社で働いてみないかとお誘いを受けたんです。IT 業界は未経験だったのですが、まずはやってみようと思い就職しました。
2017年に出産して、2019年にその会社を退職しました。他のIT企業も見てみたいと思って転職サイトを見ていたら、「小籠包も出てくるフランス料理屋さんでありたい」というキャッチコピーが目について……。それがノヴィータだったんです。ウェブ制作会社だけれども、ウェブ制作のみにこだわらずさまざまな解決方法を持っているということをたとえて言ったものだそうです。私はもともとサービス業で働いていて、お客様に喜んでもらうことにやりがいを感じていたので、おもしろそうと思い入社しました。
 
―入社していきなりリモートワークということに不安はなかったですか?
 
磯部さん 前職で保育園が決まるまでの間、少しだけ在宅勤務をしていた期間がありました。そこではリモートワークをしている人が他にいなかったこともあり、進め方に苦戦していたんです。ところが、ノヴィータはコロナ禍になる前からリモートワークを進めていたので、在宅になっても制度面やシステム面の不安はなく、むしろスムーズに移行したのですごいなと思っています。
 
ただ、同じチームのメンバーと対面で仕事したのが数回だけなので、積極的にコミュニケーションを取ることは心がけています。同じ一言でも、相手を知っているか知ってないかで受け取り方が変わることもあると思いますから。会社でプラグリhttps://pragli.com/というコミュニケーションツールを導入したり、オンラインで雑談する場を設けたりしてくれているので助かっています。

磯部さんの自宅勤務スペース

どうだった?ブランクからの復帰

 
―産休や育休によるお仕事のブランク期間は、どのように過ごされていたのでしょうか?
 
川田さん 第一子は0歳で預けて復帰したので、どちらかというと あっという間に休暇が終わってしまった感じなんです。短いブランクではありましたが、デザインのトレンドに乗り遅れないようにというのは日々やっていました。子育てしながらですので、スマホ片手に出来るような、デザインのストックやピンタレストを見るくらいでしたが。復帰が近くなると実作業を想定して、ちょっとしたものを制作してみるとか、手の感覚を取り戻すようなことをしていました。
それでも、復帰直後は思うようなアウトプットができなかったり時間が想定よりも大分かかったり……。出産前の自分と比較して、前のような成果が出せないことに落ち込んでしまうことはありましたね。
 
―復帰してからが大変だったんですね。
 
川田さん 子どものことで休むことも多かったので、最初の1~2カ月間は思うように動けない葛藤はありました。当時は、周囲に社長の三好以外にママワーカーがいなかったので、三好に相談していました。課題解決をするのは自分自身なのですが、話を聞いてもらうだけでも気持ちが落ち着きました。
「子どもが熱を出したので休みます」と言っても、若いメンバーに理解してもらうのはなかなか難しいかなとも思います。当社では自分の業務内容に関するショートプレゼンを持ち回りで行う「LT (Lightning Talks)大会」を月1回行っているので、そういった機会を活用して、子どもがいることで自分の働き方や考え方がどう変化したのかなどをシェアしています。

川田さんがLT大会で使ったプレゼン資料


 
―2019年に2度目の産休育休を取られた時は、会社の状況が変わったなという実感はありましたか?
 
川田さん その頃になると、子育てしながら仕事をしているメンバーが複数いましたね。子どもの体調不良などで休まなければならない時のために、日ごろから仕事を引き継げる環境を整えていたので、産休に入る時に自分の担当案件をお願いするのも1人目のときよりスムーズでした。
 
―磯部さんは今のお話を聞いていかがですか?
 
磯部さん 子育てに限らず、病気やライフイベントなどに関しても、お休みをいただくのに柔軟な制度が整っていますし、他のメンバーも理解があるんです。とても働きやすいなと思っていたのですが、そこに至るまでに先輩方がたくさん苦労して築き上げてきたんですね。
 

育児と仕事を両立する工夫は?

―育児と仕事の両立で工夫していることはどんなことですか?
 
川田さん 両立の仕方は私にとっても大きなテーマでしたので、最初は仕事も育児もされているいろんな方にヒアリングしました。でも、人と比較することでかえって自分を苦しめる結果になりかねないと気づき、両立できているかどうかの線引きは自分で作ろうと考えるようになりました仕事も育児もどっちつかずのまま走り続けている状態ですが、持てる時間を最大限に活用できて、仕事と子ども、それぞれに向き合えていれば両立と言ってもいいのかなと思っています。
今は在宅勤務なので、家族という社会の中だけで生きているような状態です。その中の人間関係が崩れるとダメージが大きく、特に夫とのコミュニケーションがうまくいかないと、家族全体のバランスも私自身のバランスも不安定になり、いろいろなところに影響が出てしまいます。ですから、できるだけ不満を溜め込まず穏やかな心でいること、何かを伝えるときは思いやりの心をもって話すことに一番気をつけています。なかなか難しいことですが。

川田さんの自宅勤務スペース。L字レイアウトのデスクで使いやすく


 
磯部さん 夫の帰りが遅くて平日は一人で育児と家事をしている状態が続き、ずっとモヤモヤを抱えていました。このままでは誰も幸せにならないと思い、夫と一度話し合ってみることに。すると、お互いの家事や育児に対する認識の違いが見えてきたんです。育児中の夫婦関係をもっといい方に変えていきたいという思いは一緒だったので、自分達に合ったやり方はどんな方法なのか意見を出し合いました。それが最近のことなので、これからトライ&エラーをしていく感じになるのかなと思います。
 
―お二人ともパートナーとの関係が大事ということですね。今後の目標についてお聞かせください。
 
川田さん  子どもができたことで、自分のアンテナが子育てや教育、地域環境などに向くようになりました。私はデザイナーなのでデザインという手段を用いて、子どもや子育てをする人にとってよりよい環境となるような仕事をしてみたいですね。デザイン力というのは、絵的なものだけでなく、物事を組み立て考えるというところでも発揮されると思っています。
それから、当社が運営している「LAXIChttps://laxic.me/」の影響もあり、発信することにも興味が出てきました。LAXICを通じて、自分と同じような悩みを抱えている人に解決の糸口になる情報を届けることにも挑戦してみたいです。
 
磯部さん 育児は、子どもが大きくなるまでマラソンのように長い道のりです。無理せず走り続けられたらと思っています。今後、仕事と育児という組み合わせだけでなく、介護と仕事とか、介護と育児と仕事とか、両立は形を変えて続いていくと思うので、その都度柔軟に向き合っていきたいですね。

はたママ読者へのメッセージ

 
―最後に、はたママ読者へのメッセージをお願いします。
川田さん 在宅で働く大きなメリットは、今まで通勤に使っていた時間を有効活用できること。その時間を家事や学習に充てたりできますよね。
一方で、在宅で子どもを見ながら仕事をするというのは、覚悟も必要だなとも感じています。うちも子どもの体調不良で保育園を休むことがありますが、子どもの相手をしながらデザインの仕事をするのは不可能と言ってもいいくらい。そういうときは夜に仕事をすることもあり、体力的に辛いこともあります。
それから、家にずっといるので、ストレス発散や気分転換は能動的に動かないと難しいですねそういったことを加味しても在宅勤務はメリットの方が圧倒的に多いと思うので、ぜひトライしていただきたいなと思います。
 
磯部さん 在宅勤務は文章でのやりとりが多くなるので、自分の状況や仕事の内容を言語化するスキルが必要になってきます。テキストベースでの伝え方について、私もまだまだ試行錯誤中です。もっと慣れることができれば、川田さんが挙げてくれたようなリモートワークのメリットが最大限活かせそうな気がします。
 

株式会社ノヴィータ information

代表取締役・三好怜子さんのインタビューはこちら

編集後記

インタビュー中にでてきた「LT大会」は、2015年から始まり、80回以上にもなるそうです。現在はオンラインで継続中とのこと。相互理解を深められる素敵な取り組みだなと思いました。
そして、育児と仕事の両立の工夫で、お二人ともパートナーとの関係構築についてお話しされていたのが印象に残りました。コロナ禍で仕事でもプライベートでも家にいる時間が長くなったことで、家族間のコミュニケーションの重要度がさらに増したのかもしれませんね。

SNSへのシェアをお願いします!
ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。