「働きたいけど続けられない」をなくしたい キユーピーの取り組み


日本を代表する食品メーカーのキユーピー株式会社。皆さんの家の台所にも、1つは同社の製品があるのではないでしょうか。今回は同社人事本部労務部で一児のママでもある近松さんにインタビュー。同社の働きやすい環境への取り組みや、近松さん自身のキャリアについてお聞きしました。

時短勤務でもコアタイムのないフレックス制度が利用可能

―御社の事業内容を教えてください。

マヨネーズをはじめ、ドレッシングなどの調味料の製造および販売を行っています。また、調味料だけでなく、サラダやタマゴのメニューや技術を生かし、国内外のお客様へ向けた食と健康の提案を行っています。

―働きやすい環境への取り組み、それに対する社内での反応、また、現在感じている課題がありましたら教えてください。

コアタイムのないフレックスタイム制度や、在宅勤務、サテライトオフィスを活用し、時間と場所に捉われず、個々の役割や仕事の特性に合わせて、働き方を柔軟に選択しながら生産性を追求できる就労環境を用意しています。時短勤務者に対してもフレックス制度を利用可能とし、仕事と育児を両立しやすい環境を整えています。

育児休業中の従業員に育児支援サイトを使って定期的に会社の情報を発信しています。また復帰前には上司との面談を実施し、復帰後の働き方やキャリア形成について共有するとともに、上司から活躍への期待を伝えるようにしています。上司には、育児復帰者に関する会社の各種制度やアンコンシャス・バイアスなどマネジメントに関する必要な知識をオンラインコンテンツから学習してもらい、復帰者のフォローが出来るようにサポートしています。

また育児経験を通して視野を広げ、自己成長につなげるために、男性従業員の育児休業取得を促進しており、男性育休の取得率は約80%(2021年度)と、どの部門でも取得する風土が醸成されてきています。
育児制度の体制は整いつつありますが、現在は介護に対するご相談もいただくことが多くなっています。
育児だけでなく、介護や病気の治療などでも安心して働き続けて続けていただける環境をつくるため、セミナー等を開催し、従業員の皆さんからの声を拾いながら、新しい制度の検討を進めています。

▼多様な人材の活躍のための取り組
https://www.kewpie.com/sustainability/human-rights/diversity/

―時短勤務でもコアタイムのないフレックスタイム制度が利用可能ということですね。

社員からのニーズがあり、まずはフルタイムで働いている社員を対象に導入しました。その後社内の声を聞く中で、育児中など時短勤務をしている社員も同様に、コアタイムがない働き方を求めていることが分かりました。そこで、時短勤務でも利用可能にしたのです。5時~22時の間で勤務し、かつ、就労時間を1カ月単位で調整できる勤務体制を導入しています。

―1カ月単位ということは、今日は体調悪いから短めにして、他の日に長くということもできるのでしょうか?

そのとおりです。全ての部署でそれができるわけではありませんが、上司の許可や職場の同意が得られれば、お子さんの体調や学校の行事などに応じて自由に調整することができます。

私も復帰して1年半ぐらい経ちましたが、子どもの急な体調不良やコロナによる登園自粛が多くありましたが、子どもが朝寝ている間に仕事をして、起きたら中断して、昼寝をしたら再開するなど調整していました。すごく働きやすいですね。

リモートワークについては、コロナ前から制度が導入され、当時は週2日を限度に運用していました。コロナが始まってからは、感染拡大の状況に応じて出社制限をとっていました。 これからの「with コロナ」時代の働き方について検討したところ、業務内容に応じて 「出社」 と 「リモートワーク(在宅勤務)」 をバランスよく併用し、一番生産性が上がるような働き方を各部署で柔軟にしていくということになりました。仕事の性質上、出社が必要な部門もあり、部署毎に異なりますので、よく上司と部下で会話していただくようにしています。

―育休産休を取る方の上司に対する研修にも力を入れているのですね。

これまでは、復帰者だけに研修を行ってきたのですが、実際にマネジメントしていくのは上司です。制度に対する理解を深め、一人ひとりと向き合いきちんと対話をしていけるよう、動画の研修を受けていただいています。

―上司から期待を伝えるのも大事ですね。

不安なことも多いとは思いますが、期待されて仕事をすることも、両立していく上でのモチベーションにつながると私自身思います。そういう会話が社内でもっと増えてくといいですね。

―男性育休取得も増えてきているのですね。
誕生から2歳までの間に10日間の育児休暇として有給休暇を付与しています。奥さまの復職に合わせて取るなど使い方はそれぞれですね。最近では長期間で取る方も少しずつ増えてきています。
「生まれてすぐの大変な時に一緒に過ごせて良かった」「大変な時期を分かち合えたから、その後の育児にも積極的に関われた」といった声が届いています。

復職時にリモートワーク(在宅勤務)で新しい業務に挑戦
人事本部労務部 近松 出穂さん

近松 出穂さんのプロフィール

職業:キユーピー株式会社 人事本部労務部
お子さんの年齢:2歳
居住地:東京都

―担当されている業務内容を教えてください。

働きやすい環境づくりのための制度づくりや運用、報酬や福利厚生の改定や運用、従業員の健康増進のための取り組みなどに従事しています。

―育児休暇を取得されましたか?また、取得されてどう感じられましたか?

産休・育休と合わせて、約1年半取得しました。入社以来、初めて仕事から離れたことで、改めて仕事を通じて社会とつながることのできるありがたみを感じました。育休中は、復帰に対する不安もありましたが、初めでしたので、子育てに集中していました。

―復帰後に苦労したことを教えてください。

復帰前は新卒採用に携わっていましたが、復帰後は労務の仕事に異動しました。しかも、当時は出社制限があり、ほぼリモートワーク。どうやって仕事を覚えていけばいいのか心配でした。
ですが、上司が毎日電話をしてくれたり、メンバーもチャットや電話で密にコミュニケーションをとってくれたり、わからないことはすぐ聞ける状態にしてもらえたことはありがたかったです。

こうした職場の理解があったことや、リモート環境が復帰前より整っていたことで、フルタイムの復帰でしたが、両立は想像よりもスムーズにできました。
どんなに調整をしても、突発的な事態が生じたときには、メンバーにフォローお願いすることもありますので、もしフルで出社している状況だったなら、もう少し苦労していたかなと思います。

―子育ての方では、何か大変なことはありましたか?

娘はうちの子は全然保育園に慣れなくて、ならし保育から1年間ずっと泣きながら登園していました。毎朝送っていくのが辛かったですね。それで、会社の先輩ママに相談してみたら、全部自分でやろうとせず、旦那さんに任せたら、というアドバイスをもらいました。もともと育児は半々くらいで分担していたのですが、夫にも保育園への送りをお願いするようにしました。ただ、1年は長かったですね(笑)。 今は平気ですが。

―当時は、このまま仕事続けていいのかなという気持ちになりませんでしたか?

最初は少し考えましたが、帰りはケロっとしているので、そのうち慣れるかなと。基本的に前向きなタイプなので。けれど、周りの人からは「また泣いていて大変そう」と思われていたかもしれませんね。

―育児休暇以外に、子育てに伴い取得した会社の制度は何かありますか?

マタニティ特別休暇を利用しました。妊娠中に使用できる10日間有休で、検診の際と産休前に使用しました。

―利用していないけれど、良いと感じている会社の制度はありますか?

産前10週前から使用できる出産準備休暇があります。私は幸い体調に問題なかったので使用しませんでしたが、妊娠中の体調がすぐれない方や里帰り出産を予定されている方にとっていい制度だと感じています。

採用した人が長く働ける環境づくりを

―現在の働き方のメリットと課題について教えてください。

復帰後はフルタイムで働いています。職場の理解もあり、フレックスと週2~3日間リモートワーク(在宅勤務)ができることが、フルタイムで働けている大きな要因だと感じています。急に休むことになった場合に、チーム内で対応してもらえるよう、情報共有は密にしています。

―今後のご自身のキャリアをどのように考えていらっしゃいますか。

採用に携わった経験から次は働く環境づくりをしたいと考え、幸いにも今の仕事に携わっています。
期待をして入社していただいたのに、残念ながらアンマッチで辞めていかれる方や、働きたいけど続けられないという方も中にはいらっしゃいます。転職は決して悪いことではなく、次のステップに進むことは大賛成ですが、働きたいけど続けられない人はゼロに近づけていきたいですね。

今は、時間の使い方として、会社・家庭の割合が半々ですが、社外の活動を増やし、いろいろなことを経験したいと思っています。当社は副業制度も導入していて、少しずつ利用者も増えてきています。そういう方たちを見ていると、外でさまざまないろんな経験や学びを得て、それが社内で生かされているなと感じています。
私もゆくゆくは、社内および社外でも通じるような専門性(人事労務領域)を持った人材になり、会社や社会貢献したいと考えています。

編集後記

コアタイムなしのフレックスや、リモートワーク(在宅勤務)をはじめ、柔軟な働き方を推進しているキユーピー株式会社。インタビューに同席してくださった広報の方は、大学生と高校生のママで、子どもの受験時にもこうした制度があって助かったという話もお聞きました。小さなお子さんがいる人だけでなく、それぞれのライフステージにあった働き方ができる環境が整っているのですね。

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ABOUT US
ライター・Y田
フリーライター兼フォトグラファー。仕事と子育てを両立したいママをサポートするNPO法人との縁で、働き方をテーマとする記事を執筆するように。取材を通していろいろな人や企業に出会うことが楽しみ。プライベートでは、中学生の女子の母。