ブランクを恐れずに一歩踏み出そう! (株)Brightone代表 谷口章子さん


ブランクが出来てしまうと、子育てに余裕ができて働きたい気持ちが強くなっても、最初の一歩を踏み出す勇気が持てないこともありますよね…。
今回は(株)Brightone代表で、女性専用コワーキングスペースの運営やママ達の社会復帰をサポートなど、多岐に渡って事業を展開されている谷口章子さんに、出産や育児を経て変化する女性のキャリアに関して感じていらっしゃる事をお話を伺いました。
(谷口さんの在宅ママインタビュー記事はこちら

谷口さんが展開されている事業に関して

谷口さんはBrightoneの代表として、多岐に渡って事業を展開されていますが、中でもはたママ編集部としてはママの支援事業をされているところが気になるところ。谷口さんご自身は具体的にはどのような支援をされているのですか?
どちらからというと”今は”仕事より子育てに比重を置きたいにママ達を集め、働くと暮らしをきっちり分けることなくでできる業務を一緒に考え昨年7月末にスタートしたCo-sodateというメディアの運営をしています。具体的には、普段子どもと公園に行く、お買い物やご飯を食べに行ったことを記事にしてもらったり、編集をしてもらったりしています。元々スタッフが持っているスキルや情報力を生かしてWordpressを使うとか、ライティングとか、地域の商売をしている方とコミュニケーションをして今持っている力を更に伸ばすといったところです。
その他、事務系の業務委託の案件は積極的にスタッフに依頼しています。

お仕事はどのように獲得されているのですか?
紹介が多いですね。前職や知り合いからの紹介が多いかもしれません。私がフリーランス時代にお世話になったところで、以前は違うところにお願いしていたものを、うちにお任せしていただくこともあります。そういった紹介が多いかもしれません。

ママの支援事業はどのくらい前からされているのですか?きっかけがあったのでしょうか?
5年前に会社を辞めることを決めたのですが、その時に女性だけが子どもを持った時に、仕事と両立できずキャリアを断念してしまう。その現実が許せないと思ったことがきっかけです。
会社員でバリバリやっていて、やめようと思った時に同じような悩みにぶつかったり、働くスタイルが求めているものと違っていたりとか。働く選択肢が当時は特に少ないと感じていました。子どもの年齢に応じて、自分が心地良いと感じるペースで働けるような選択肢を作りたいとぼんやり思ったことで、3年前から地域のママ達を活動を始めました。

ブランクをどう考えるか

対象は、結婚や子育てをきっかけに一度離職した中央区近隣在住のママ達とのことですが、ブランクについてどのように感じていらっしゃいますか?
私が出会ったママ達は、ブランクをマイナスに捉えていて自信がないというの第一印象を受けました。
最初にこの事業を始める時に、ひとりのママとお話しました。
彼女はハウスメーカーで営業アシスタントをされていた方でブランクは5、6年あったと思います。
その方はコミュニケーション能力が高く、
「きっと会社でもコミュニケーション能力が高く、評価されたのだろうな。」
というのが初対面でも容易に想像できるようなママでした。
なぜ働いていないのか、どんな思いがそこにあるのかを聞かせて欲しいなと思ったのですが、話すたびに
「私なんて…」
という一言が私とのコミュニケーションの中でたくさん出てきました。お話を伺った後、一緒に働きたい旨をお伝えしたら、彼女から出た第一声が「私なんか…」でびっくりしました!
「私はブランクがあるし、何もできないと思っていました。だから声をかけてもらえるなんて思ってもみなかったです。」と言われました。
そんな彼女にも今はメディアの運営で大活躍し、いろいろとお仕事をお願いしています。

ーその方は、仕事を離れていた間に自信をなくしてしまっていたのでしょうか。
そうですね。
ブランクが完全にマイナスということではありませんよね。自分がブランクに対してどう思おうと、他人がどう評価するかはわからない…。採用側の全ての人がマイナスだと考えているわけではない、と私は思いたいです。
例えば、PC作業などができるか不安という方も多いのですが、ある程度慣れる時間は必要だと思います。ただ、既にスキルは持っているので、何もかも忘れているということはないのでは。
私にとっては育休を取得していた時がブランクに当たりますが、その時はスキルが全てなくなるような気持ちになり不安でしたけど…。その育休中に私が得たものは「物事の優先順位をつける」でした。
子どもを産む前は働きたいだけ働く、という働き方でした。子育てをしている中と退社時間はおのずと決まってくるわけなので、その中で何が一番大切なのかを考えて行動するようになりました。だから私は、育休明けはパワーアップしたと思っています!

同様に育休を取得されている方と会うと、育休から職場復帰に抵抗を感じる人は多いのでしょうか。
育休中の知り合いがいますが、仕事に戻りたくないと話していました(笑)。2人目ですが、1人でも大変だったのに、今後どうなるんだろうと悩んでいましたね。個人で捉え方は違うと思います。

育休ということで、戻る場所がある方でも悩むのですね。退職されてしまったママたちは、やはり「私なんか…」と言うことが多かったのでしょうか。
多いです!!私から見ると社会人としての経験もお持ちだし、コミュニケーション能力の高さを感じるママ達だなと思うのに、自己肯定感の低さが目立っていると感じますね。
彼女たちに、どう自信をつけてもらうか、思っている自分とは違う(能力をしっかり持っている)ということを伝えるようにしています。
ただ「ほめる」と言うのとは違い、当たり前のように自分ができていることを何なのかを伝えるのは重要だと感じています。

谷口さんと一緒に働いているママたちが実際されている活動を拝見すると、逆にポジティブな印象しか受けません!
そうですね、今は「私なんか」ということはないかも(笑)。働き出して慣れてきたこともありますし、できることも増えてきました。私たちは「みんなでやっていこう」という意識で仕事をしています。だからSNS、Wordpres、ライティングなどはほとんど全員やっていなかったけれど、今ではできるようになりましたからね!
Co-sodateで配信している情報は、日々の暮らしに役立つことを発信。住んでいる地域のお店紹介や子どもと遊ぶための公園について投稿しています。今彼女たちがやっている仕事は日々の暮らしが交わっているので作業しやすいと思います。
最近は、スタッフから自らやってみたい企画を提案されることが増えたなと感じますよ。

集まったスタッフの方はほとんど社会人経験がある方ですよね?
そうです。ただ、前職が接客業だったのでPCを仕事で使用したことがない、というスタッフはいました。ただ、元々の性格が几帳面だったということもあり、excelでの業務も問題なくやっていますし、書類のチェックもしっかりしています。
私自身、仕事はスタッフの性格で振り分けているかもしれません。その方の性格に合った仕事をいうものもありますので。あとは挑戦したいとそのスタッフが思うかどうかですね!

ママたちにとって仕事の存在は大きいですか?
どういう選択を自分がしたいかですよね。家事や子育てを自分のペースで思う存分やりたいという人は働くということを必要としていませんよね。
対照的に、働きたいと思っている方にとっては、仕事の存在は大きいかもしれません。
「ちょっとだけ働く」ということに挑戦したいと思う人にとっては、何かしら動き出すことは重要だと思います。

様々なママたちを支援されてきて子育て中の女性のキャリア形成において課題と感じていらっしゃることはありますか?
課題はやはり「一歩踏み出すこと」ではないでしょうか。「私なんか…」の状態にしておくと、結局「私なんか…」のままでいるじゃないですか。自分が何をどのレベルまでやりたいのか、何が好きなのかを知る。まずは行動をしてみることではないでしょうか。黙っていても誰から声を掛けてもらえるということもありません。シンプルなことですが、失敗を恐れず踏み出すことが大事だと思います。
「働きたい!」と声に出していたらチャンスはあるのかもしれないけれど、内に秘めていたら秘められっぱなしで、それはわかりませんよね(笑)。
やりたいことや実現したいことがあるなら、まずは口に出してみるのはいかがでしょうか。頼れる人に相談してみるといったことでも良いのですし。
ちょっと自分が挑戦してみたいと思う気持ちを大切にし、チャンスがあったら思い切って飛び込んでみるのも良いと思います。やったことがないから挑戦しないのではなく、挑戦したいと思ったらまずは行動してみるのはどうでしょう。

最近は共働きが主流になってきていますね。将来が心配で長年勤めた会社を離職される方は少ないのかなと思うのですが。そのあたりいかがでしょうか。
私の周りはわりと退職して、新たな道を歩む人が多いような気がします。
けれど、起業することだけが選択肢じゃありませんからね!会社員やフリーランスといった業務形態がいくつかありますが、人によって向き不向きがあると思います
育児や仕事、お金…各家庭で優先順位があると思います。私自身、起業するに至っては「お金を捨てる」ということを選択しました。数年はお金の優先順位を下げることになるかもしれないけれど、まずは自分がやりたいことをやってみようと思いました。子ども達にとって誇れるママでありたいと思ったからです。そうなりたいために、自分がやりたいことを一つずつやっていこうと思いました。
でもお金が第一優先の方もいらっしゃいますよね。そうなると考え方は全く異なると思います。
自分が何を重視していて、どんな暮らしや人生を歩みたいのかによって方向は様々だと思います。

谷口さんの周りの方は起業されている方が多いのですね。
そうですね、私自身がそうだから、自然と集まってしまったのかもしれません。

谷口さんの背中を見て、起業を思い立った人も多い気がします。
いることはいますね。でも多くはありませんよ(笑)。私の姿を見て逆にできない、自分で何かをやるのは怖い、という人もいますし。

実際、今の仕事をスタートされる時、不安はありましたか?
どうやって仕事を確保するのか、という不安がなかったわけではありません。ただ、今はフリーランスで仕事を紹介してくれるサイトもいっぱいあります。私だって、最初から人脈があったわけではありませんから。
例えば交流会に行ってみる、紹介サイトで自分に何ができるのかを整理する、ということをしましたね。そこで、自分の強みというのはこういうところなんだなと、客観的に見るというところからスタートしましたね。仕事をしていくと、自分の得意分野もわかってきますから。

前回のインタビューで「笑っているママが好き」という娘さんの一言をきっかけに独立されたとおっしゃっていましたが、独立して4年を迎えて新たに娘さんから掛けてもらった声はありますか?
「大きくなったら、ママみたいに事務所を作りたい!」
というのは上の娘が話していますね。
下の息子は
「ママ、お仕事頑張って!忙しいから(僕は自分のことは自分でやるから)いいよ。」
という言葉がけをしてくれて、私を送り出してくれます(笑)。
子ども達の中で、「ママにとって仕事はとても大切なもの」という風に認識してくれている、と感じていますね。

谷口さんinformation
女性専用コワーキングスペース ㈱BrightOne代表
運営メディア Co-sodate

編集後記

社長・市川

「私なんて」という発言がママから出るのは、ブランクだけが原因ではないように思っています。子育てや家事はやって当たり前、誰にも褒められないし感謝もされてこなかった中で、悩みながらやっているうちに自己肯定感が低くなってしまった人が多いのではないかと感じます。弊社シンプルメーカーでは、仕事を通じて感謝されることに喜びを感じている方も多く、それによって自己肯定感が低かった人も段々自信を取り戻しているように思います。出産・育児も立派なキャリアだと私は思いたいです。

「ブランク」をネガティブに捉えているママたちはたくさんいます。。実はO山も子どもが2、3歳くらいの時期(約1年半)は、ブランクがありました。(O山自身のインタビューはこちら)その時期はパンやおやつも手作りで、何より読書ができてライターの充電期間として申し分なかったと思います。けれど、公園でママ仲間と遊んでいる時に「前職は何?」と聞かれ、ライターと即答ができませんでした。そう、谷口さんに初めて会ったスタッフと同じように「私なんか…今さらライターと名乗っていいのだろうか?」という思考が離れませんでした。
毎日不安でしたが求人を見続けて、今こうしてはたママprojectのライターになったわけですから、素直に自分を褒めようと思います(笑)。「私なんか…」で終わらず、恐る恐るながらも行動して本当に良かったです。私たちの会社に在籍するママエンジニア達もブランクを経て、現在活躍中ですし!
谷口さんもおっしゃっていましたが、 “他人は自分のブランクは気にしていない”のではないでしょうか。
育児だって社会にとって大切な仕事です。出産や育児期間の仕事のブランクは自分の伸びしろだと信じてみませんか?ママたちは育休期間も休まずに育児をやってきたのですから。私たちはもっと胸を張って良い!自分を責めず、自信を持って行動していきましょう。

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