教員の長時間労働と両立の壁に向き合って──現場のリアルと今できるアクション~Omoinomamani 小坂尚子さん~

教員の長時間労働や人手不足、そして子育てとの両立の難しさ──。
こうした課題が叫ばれる一方で、現場の先生たちは日々の業務に追われ、自分の働き方を見つめ直す余裕すら持ちにくいのが実情です。

元小学校教員の小坂尚子さんも、かつてはその一人でした。
「ロボットのように時間に追われる毎日だった」と語る経験を経て、今は教員向けキャリアアドバイザーとして、育休中ママの不安に寄り添うセミナーや、学校現場の働き方を見つめ直す研修を精力的に行っています。

この記事では、小坂さんが元教員だからこそ語れる現場のリアルと、先生が笑顔で働き続けるために必要なことを、率直な言葉で紐解いていきます。

小坂尚子さんのプロフィール

職業・現在の活動内容:教員向けキャリアアドバイザー・教員の働き方支援
お子さんの年齢:3歳、9歳
居住地:兵庫県
勤務形態:個人事業主/セミナー講師

活動のきっかけ・背景

現在の活動を始めようと思った背景を教えてください

教員として働いていた頃は、10~12時間勤務が当たり前で、ママ教員になると保育園の送迎に追われ、常に時間との戦いでした。持ち帰り仕事をしないと決めていた分、勤務中は息つく間もなく働く毎日。気づけば娘にも「早くして」と急かす言葉ばかりかけていて、「このままでは子育てを楽しめていない」と感じ始めました。

そんなある日の帰り道、車を運転しながら無意識に「うわーっ」と叫んでいたんです。その瞬間、「あ、もう続けられないかもしれない」と思いました。精神的な余裕が完全になくなっていたんだと思います。

学校では長く残って働く先生が評価される風土が強く、子育てと担任業の両立を応援してくれる人は周りにいませんでした。さらに、祖父母の協力なしでフルタイム勤務を続けるママ教員がゼロで、「教師って、家族の助けがないと続けられないのかな」と感じたことも決定的でした。

「教師という職種を手放す選択肢もあるのかもしれない」と考え始めたのが、今の活動につながるきっかけでした。

育休中ママ支援・セミナー・研修について

セミナーや研修で「必ず伝えたい」と考えているテーマはなんですか?

研修は「受け身で面白くない」というイメージを持っている先生が多いと感じています。だからこそ、私はワークシートを多用し、考える時間をたっぷり取る構成にしています。元教員として、現場で実際に起こりうる事例をもとに話すことを大切にしています。

個人向けセミナーでは、全体の場では話しにくい悩みも受け止められる空間づくりを心がけ、「復帰が不安」という声にとことん寄り添います。
学校向け研修では、先生同士が交流し、お互いの工夫や価値観を知ることで、働きやすさにつながるような内容にしています。

また、しんどくなったり八方塞がりになったりしたときには、「相談する」という行動をとってほしい。誰でもいいわけではなく、自分が尊敬できる人、自分のことをきちんと見てくれそうな人であることが大事だと思っています。

私自身も、「体を壊してまで続けるべきではない」ということと、「折れる前に誰かとつながっておくこと」の両方を、セミナーの中で伝えるようにしています。私を使ってもらってもいいですし、身近な誰かを頼ってもらってもいい。とにかく、一人で抱え込まないでほしいというのが、根底にあるメッセージですね。

特に印象に残っているのは、育休中のママ向けセミナーに毎月参加してくださった先生からいただいた言葉です。
「このセミナーがなければ不安で押しつぶされていたと思う。なおこ先生の雰囲気に救われました。」
「周りに同じ悩みを持つ人がいると知り、前に進めた。」
泣きながら感謝を伝えてくださったこともありました。私はこの瞬間に、やっていて本当に良かったと心が震えるような思いをしました。

学校向け研修でも、校長先生が退勤時刻宣言ボードを活用し始めたり、研修後に仕事の進め方を見直す先生が増えたことで「先生たちの退勤時刻が早くなった」という声をいただいたことがあります。
目に見える変化が起こったのは嬉しかったです。

活動の課題・工夫・学び

活動の中で感じている主な課題・難しさはありますか?

業務改善をテーマにした研修を行ったとき、先生方はお疲れの時期だったのもあり、「改善策を考えるところまで気持ちが向かない」状況がありました。課題があるのはわかっていても、案が浮かぶ余裕がない。
この経験から、私は「他自治体の実践例をもっと集め、明日から使える工夫を提示できるようにしなければ」と強く感じました。

個人向けセミナーについては、対面のみで開催していることもあり、必要としている全国の先生に届けられていないという課題があります。私自身の認知不足もあり、まだまだ届いていない人がたくさんいます。

研修は今後どのように広げていく想定ですか?

セミナーに限らず、先生たちが「明日から使える」「これがほしかった」と思える内容を増やしていきたいと考えています。オンライン開催も本格的に取り入れ、全国どこにいる先生でも参加しやすい環境を整えたいです。
学校、組合や教育委員会主催のセミナーで登壇し、多くの先生方に対して少しでも役に立つ内容が届けられたらと感じています。

また、研修後も相談できる仕組みをつくるなど、継続支援の形も模索しています。
「セミナーで終わり」ではなく、働き方を根本から変えていくための伴走が必要だと感じています。

社会課題・教育現場の課題に対する想い

働き方や制度上の課題が、先生やママ教員へ与える影響はなんでしょうか?

教員の精神疾患による病休者数は過去最多の7,119人。一般企業より約3割も多い。この数字を見るたびに、胸が締めつけられる思いになります。

働き方改善は進んでいるようで、現場の実態を見るとまだまだ厳しい状況です。
時短勤務制度があっても、復帰したときに「担任は必須」と言われる現場もある。改善策のデータは膨大で、学校の先生が片手間で対応できる量ではありません。

管理職の意識が若手時代の価値観のまま変わっていないことも、現場の負担を重くしています。
さらに、核家族化が進み、祖父母のサポートを得られないママ教員は、家庭と仕事の両立が限界に達しやすい。

問題が複雑に絡み合い、1つの施策だけでは改善が難しいのが現状です。
それでも私は、「先生が笑顔でいられる働き方」を諦めたくありません
自分の力でコントロールできる部分から整えていくこと。そのための知識や工夫を伝え続けたいと思っています。

今後の展望・挑戦

「先生のあったらいいな」を形にする商品づくりでは、何を解決したいですか?

教員として働いていた頃、「もう少し効率的にできたら楽なのにな」「かわいいものを持てたら気分が上がるのにな」と感じる場面がとても多くありました。そんな日々のちょっとした不便や「あったらいいな」を、元教員の視点で形にしていきたいと思ったのが商品づくりの原点です。

今はまず、教員向けの大きなA4やB5サイズの手帳に使える手帳カバーを試作しています。市販のカバーは青や黒など無地のものが多く、デザインの選択肢がほとんどありません。一方で、先生たちは付箋を頻繁に使うので、カバーに付箋をセットできたり、付きがちな赤ペンのインク汚れを拭き取れる素材だったりと、「かわいさ」と「実用性」を兼ね備えたものがあれば、毎日の働き方が少し楽になるはずだと思っています。

実はもともとハンドメイドが好きで、育休中には子どものワンピースを夢中で作っていました。セミナーで先生たちの悩みを伺う中で、「この好きと経験を掛け合わせれば、もっと現場の役に立つものが作れるのでは」と思うようになりました。

先生たちが、大変な毎日の中でも少しだけ気分が上がるように。
そして、効率が上がって自分の時間が取り戻せるように。

そんな思いを込めて、手帳カバーをはじめとする商品づくりに挑戦しています。

読者へのメッセージ

子育ては期間が限られていて、私にとってはじっくり味わいたい大切な時間でした。
まだ教員だった頃、娘がランドセル購入予約後に「やっぱり色を変更したい」と言ってきた時に、「お母さんがしんどい思いをして働いたお金なんやで」と言ってしまったことがあり、深く反省しました。
今の私を見て育ったら、娘は「大人って大変そう」「仕事ってしんどいもの」と感じてしまう。そう思ったのです。

しんどさの中にも、楽しみながら働ける自分でいたい。
余裕がなくても、笑顔を忘れない自分でいたい。
そう思うようになってから、働き方や価値観も変わっていきました。

子育てと仕事の両立は、本当に大変です。
でも、無理をしすぎないこと、力を抜けるところは抜くこと、周りを頼ることは悪いことではありません。

そして何より、あなた自身が生き生きといられる日々を大切にしてほしい。
その姿を見て育つ子どもたちは、きっと未来を前向きに捉えてくれるはずです。

編集後記

小坂さんのお話には、現場の厳しさと、そこに向き合い続けてきた等身大の思いが詰まっていました。「先生もひとりの人間として、笑顔で働ける環境をつくりたい」という言葉は、多くの読者にも深く響くのではないでしょうか。
研修や商品づくりという形で、現場の「あったらいいな」を丁寧に拾い上げていく姿勢が、これからの教育を確かに前へ進める力になっていくと感じました。

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