業界最大級のオンラインレンタルドレスサービス「おしゃれコンシャス」を運営する株式会社ミスコンシャス。「すべての女性に『着飾る』よろこびを」というビジョンのもと、豊富な品揃えと徹底した品質管理で多くのファンに愛されています。
同社が大切にしているのは、働く仲間との「頑張れば輝ける場所をつくる」という約束。単に働きやすいだけでなく「働くことが楽しい!」と思える環境づくりを追求し、有給休暇消化率90%超を達成、「愛知県休み方改革マイスター」最高位のゴールド認定も取得しています。
今回は代表取締役の小山絵実さんと大羽さんに、根性論に頼らない「誰が休んでも回る仕組み」と、お互いをカバーし合うことで生まれるキャリアへの好影響について伺いました。
職業(担当業務):カスタマー業務マネージャー
お子さんの年齢:11歳(小学校6年生/男)
居住地:愛知県
勤務形態:7.45時間の時短勤務
誰も謝らなくていい職場をつくりたい。仕組み化への決意
まず、ミスコンシャスさんが現在の働き方改革を推進するようになった原点を教えてください。
小山さん: 私自身が一人の働く母親であり、会社を立ち上げた当初は寝る間も惜しんでフルマックスで働いていました。会社がまだ十人規模だった頃、ある女性スタッフがお子さんの急な発熱で保育園から呼び出されたんです。彼女は電話を切った瞬間から焦り、周囲のメンバーに向かって「本当にすみません、すみません」と何度も頭を下げながら、まるで逃げるように帰っていきました。
その背中を見送ったとき、私は経営者として激しい違和感を覚えたんです。「彼女は何も悪いことをしていない。仕事も育児も必死に頑張っている。それなのに、なぜ経営者なら抱く必要のない『罪悪感』や『謝罪』を、雇用されているというだけでこれほど抱え込まなければならないのだろう?」と。
不可抗力の事態で謝りながら職場を去る構造そのものを変えたい。「絶対に誰も謝らなくていい職場をつくる」と心に誓ったのが、すべての原点となっています。
理想を形にする上で、どのような課題や葛藤がありましたか?
小山さん: リアルな経営者の心理として、誰かが急に休んだとき、その穴を埋める仕組みがなければ残されたメンバーに過度な負担がかかります。私自身も、心のどこかで「仕事が滞ってしまうな」ともどかしく思ったり、イライラしたりしてしまう人間のリアルな弱さを持っていました。
ここで多くの企業は「もっとお互いに優しくしよう」という精神論や根性論に頼ろうとします。しかし、このもどかしさの根本原因は人の心の狭さではなく「誰か一人が休んだら回らなくなる業務設計そのもの」にある。そう確信しました。だったら根性論に逃げるのを一切やめて、誰がいつどんな理由で一週間休んだとしても、何事もなかったかのように平然と回り続ける「仕組み」を構築しようと決意し、システム改革へ舵を切りました。
現場で実践する「情報の可視化」と「シェアワーク」
現場では具体的にどのようなルールで業務を回しているのでしょうか?
大羽さん: 小山さんが設計した「仕組み」を、私たち現場は徹底的なルールに落とし込んで運用しています。キーワードは「情報の可視化」と「ブラックボックス化の排除」です。
代表的なのが顧客対応におけるシステム運用です。問い合わせ履歴や対応内容は、一言一句レベルで必ず社内システムにメモとして残します。「何月何日にどのような内容があり、どう対応したか」を完全に可視化することで、対応していたスタッフが翌朝急に休むことになっても、別のスタッフがそのメモを読めばスムーズに引き継ぐことができます。
さらに、私たちは「事後報告」だけでなく「事前予測」のアナウンスも徹底しています。まだ注文が確定していない段階でも、「このお客様からは、明日このような内容で折り返しの連絡が来る可能性が高いです」といった予測情報を、リアルタイムで社内チャットに流すようにしています。これをチーム全体が目を通しておくことで、突発的な入電があっても、全員が即座に対応できる情報量を持つことができるのです。
個人のセンスに依存しがちな業務、たとえばSNS運用などではいかがですか?
大羽さん: インスタグラムなどの運用でも、月1回ミーティングを行って全体のテーマや他社事例の分析をディスカッションし、作成レベルの平準化を図っています。その上で、投稿スケジュールや画像素材、テキスト内容はすべて共有のエクセルで一元管理しています。これにより、誰が休んでも別のメンバーが指定内容を代理で投稿できる体制が整っています。
仕事を他のメンバーと共有する「シェアワーク」は、カバーする側にもメリットがあるそうですね。
小山さん: 部署やチームという最小単位に細分化していけば、結局はどの会社も「十人単位の小さな組織」の集まりです。私たちは十人ほどの規模だった時代から、一人が複数の業務をこなせるようにする、あるいはチーム全体で仕事を共有する「シェアワーク」の文化を意図的に根付かせてきました。
誰かが休んだから他のメンバーが仕事をカバーするという経験は、単なる穴埋めではなく、カバーする側のスタッフにとって絶大なメリットをもたらします。これを私たちは「他者効果」と呼んでいます。
例えば、普段はドレス提案をするスタイリストが、ライティング業務をカバーすることになったとします。彼女はライティングを通じて「どうすれば読者に届く文章になるのか」「どんなキーワードで検索されているのか」というマーケティング視点での裏側のロジックを深く学びます。
その結果、本業に戻ったときにもお客様へのアプローチやコーディネートの提案の質が劇的に変わるのです。他者の仕事をカバーすることが、巡り巡って自分自身の本業のスキルアップに直結します。若いうちから様々な立場の業務プロセスや心理に触れる経験は、視野を圧倒的に広げ、将来的に管理職に回ったときにも他部署の気持ちが理解できる「最高の財産」になります。

全員出勤だからこそ耕される「人間関係の土壌」
ミスコンシャスさんは、あえて「全員出勤」にこだわっていると伺いました。
小山さん: これだけデジタルツールを活用して仕組み化を進めている一方で、フルリモートワークではなく「全員出勤」の体制を貫いているのには明確な理由があります。オンラインのコミュニケーションは業務を効率化する上では優秀ですが、そこで削ぎ落とされてしまう日常の雑談やアイスブレイクの中にこそ、組織の潤滑油があると考えているからです。「仲間と一緒に働く楽しさ」を肌で感じる環境を大切にしています。
また、家庭を持つ女性スタッフが多く夜の飲み会を開催するのはハードルが高いため、私たちは業務時間内に会社負担で行う「お昼のランチ会」を定期的に実施しています。
ランチ会は実務にも良い変化をもたらしていますか?
大羽さん: 効果は絶大です!普段の実務ではあまり深い接点のない技術職(ドレスのお直しやメンテナンスを担当するお直しチームなど)のスタッフとも、美味しいご飯を食べながら雑談で盛り上がることができます。
事前に人間関係の土壌が耕されていると、急なお客様の要望で「どうしても明日の午前中までにお直ししてほしい」という、相手の業務に負荷をかけるような突発的な相談をしなければならないときにも大きな変化が出ます。普段からランチ会で笑い合っている仲だからこそ、心理的なハードルなく気兼ねなく相談でき、相手も快く引き受けてくれる土壌ができています。
完璧じゃないトップの背中と、これからのキャリアを歩む仲間へ
有給休暇消化率90%超という数字も驚異的ですが、休みやすい雰囲気はどのように作られているのでしょうか。
小山さん: 私は代表という立場ですが、社内で「完璧な経営者」として振る舞うのをやめました。エクセルの計算ミスや物忘れをすることもありますし、それをすべてオープンにしています。子どもが病気になればもちろん休みますし、旅行のために大型の有給休暇を取る姿もスタッフに見せています。
トップが率先して休む背中を見せることで、メンバーも自発的に調整し合いながら、文字通り「罪悪感ゼロ」で有給を使える風通しの良さが確立されています。
大羽さん: 私自身、過去に子どもが一週間続けて熱を出してしまい、会社を丸々休まざるを得なかった時期がありました。毎朝、申し訳ない気持ちで連絡を入れていた私を、チームのメンバーは「仕事は全部こっちで回しておくから心配しないで!」と笑顔で支えてくれたんです。
その経験があるからこそ、いまライフステージの波の中で葛藤している方に伝えたいのは、人生にはどうしてもコントロールできない「うまくいかない時期」が絶対にあるということです。でも、その時期に無理をして自分を責める必要は全くありません。「生活が落ち着いたときに、今までの分の何倍も周りに恩返しをして頑張る気持ち」でいられれば、それでいいんです。動けるときは100%の力で頑張り、しんどいときは仕組みと仲間に全力で甘える。そんな関係性があれば、前向きに働くことを心から楽しめます。
最後に、仕事とプライベートの両立に悩む読者や、組織改革に悩む企業の担当者へメッセージをお願いします。
大羽さん: 仕事と家庭の両立に悩んでいる方には、「一人で抱え込まないで」と伝えたいです。ミスコンシャスで働くようになって、誰かに甘えたり頼ったりすることは、決して悪いことではないと知りました。お互いに支え合える環境があれば、ライフステージが変わっても自分らしく輝き続けることができます。
また、組織づくりに悩む企業の担当者の方には、現場のリアルな声として、制度やシステムといった「仕組み」があるからこそ、メンバー同士が心から優しくなれるのだと感じています。心理的な安全性が担保された職場は、結果として一人ひとりの当事者意識と高いパフォーマンスを生み出すはずです。
小山さん: よく世間ではワークライフバランスが叫ばれ、定時で帰れることばかりが注目されますが、私は「単に定時で帰れるだけの職場」では、人のモチベーションは絶対に上がらないと考えています。せっかく人生の貴重な時間を会社に投資しているのなら、斜に構えず、その環境で一生懸命に挑戦し、仕事そのものを楽しんでみることが何より大切です。
子どもが小さくて、肉体的にも精神的にも「本当にどん底だ」と感じる時期は、長い人生の目で見れば、実は半年や1年といったほんのわずかな期間に過ぎません。その暗闇の中にいるときは、誰もが仕事を辞めてしまおうかと迷うものです。
しかし、そこで「支えてくれる仕組みと仲間がいるから」「この仕事が好きだから」と、少しだけ踏ん張ってキャリアを継続してみてほしいのです。どん底の時期を仲間と共に乗り越え、継続したというその経験そのものが、数年後、あなた自身の人生を支える最高の「財産」になっているはずですから。
編集後記
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急な休みをカバーすることを負担ではなく、「他部署の仕事を学び、自身の視座を高めるチャンス」へと転換させているミスコンシャスさん。この前向きな循環を生み出しているのが、属人化を排除した徹底的な可視化の仕組みです。
この仕組みが冷たいシステムで終わらないのは、根底に「頑張れば輝ける場所をつくる」という働く仲間との真摯な約束があるからに他なりません。
守られるだけでなく、誰もが主役となってキャリアを築き、仕事そのものを楽しめる職場。そんな「お互い様」がもたらす組織の強さを、深く実感させられるインタビューでした。
関連リンク
株式会社ミスコンシャス
https://miss-cons.com/#up












役職: 代表取締役社長
ご経歴:愛知県蒲郡市出身。
居住地:愛知県
2004年度 準ミスインターナショナル日本代表に選出。(椙山女学園大学在学中)
2005年度 ミスアース世界大会に、日本代表として出場。その後、東京・アジアにて4年間ファッションモデルとして活動。
ファッションモデルを引退後は、「美に携わる仕事で、“女性のキレイになりたい”を応援する」というスタンスを持ち、ビューティートレーナー・女性向けサイト運営等を経験。
2009年 結婚。
2011年度 ミセスワールド世界大会に日本代表として出場。
2012年 株式会社ミスコンシャスを設立。
2014年 第一子を出産。
2019年 第18回女性起業家大賞最優秀賞受賞。
2020年 第二子を出産。
社長就任歴:2012年1月27日創業時より(15年目です)