働き方やキャリアの選択肢が多様化する中で、「年齢」「学歴」「ライフステージ」によって、無意識のうちに選択肢を狭めてしまってはいないでしょうか。
株式会社OkojoAIは、そうした既存の枠にとらわれず、一人ひとりが最も力を発揮できる働き方を対話からつくろうとしている会社です。働きながら博士号を取得した経験を持つ代表・立浪祐貴さん自身の実体験を背景に、博士課程の学生、育児中の人、シニア層など、多様な人材が自然に活躍できる環境づくりを進めています。
本記事では、OkojoAIが描く「誰もが自分らしく働ける組織」のあり方について、立浪さんの言葉を通して紐解いていきます。
多様な人材が活躍できる環境づくり
働きながら博士号を取得する中で、最も大変だったことと乗り越え方を教えてください
正直に言うと、仕事と博士課程の両立そのものも大変でしたが、そもそも博士号を取得すること自体が簡単なものではありません。学生として研究に専念していても、3年で必ず修了できるとは限らない世界です。その中で働きながら進めるというのは、想像以上に負荷が大きかったと思います。
私が意識していたのは、大きく二つあります。一つは、両立を理解してくれる環境に身を置くこと。前職ではありますが、研究と仕事を並行することを前提に受け入れてくれる会社に所属できたことは、非常に大きかったです。
もう一つは、研究テーマの選び方です。研究はやってみなければ成果が出るか分からない部分も多いですが、両立を前提にする以上、「100やってようやく成果が出るテーマ」ではなく、「10やれば成果につながる可能性があるテーマ」を意識して選びました。研究の質を落とすという意味ではなく、限られた時間の中で成果を出すための現実的な選択でした。
博士課程の学生やシニア層が活躍できる場を、どのように広げていきたいですか?
私自身が働きながら博士号を取得した経験から、優秀で意欲のある人材が、必ずしも従来の「フルタイム正社員」という枠に収まるわけではないと強く感じています。特に小さな会社が優秀な人材と出会うためには、お金や肩書き以上に、「多様性を受け入れる姿勢」が重要だと思っています。
博士課程の学生に関しては、研究と実務は対立するものではなく、相互に高め合える関係だと考えています。論文で得た知見を実装に活かし、実装で見えた課題を研究に還元する。そうした循環を回せる環境を用意したいと思っています。
60歳以上のベテランの方についても、ぜひ活躍していただきたいです。ただし、年齢や過去の肩書きにとらわれず、新しい技術や考え方に対して「面白い」「試してみよう」と柔軟に向き合える方と一緒に働きたい。若い世代と対等に意見を交わしながら、経験を活かしてもらえる関係性を築きたいと考えています。
多様な人材が働きやすい環境づくりで、現在取り組んでいる工夫は?
大切にしているのは、「会社のルールに人を合わせる」のではなく、「その人が最大限パフォーマンスを発揮できる働き方を一緒に設計する」ことです。
入社前の段階から、「あなたにとって最適な働き方は何ですか?」という問いを軸に、徹底的に対話します。博士課程の方であれば学会や論文執筆のスケジュール、育児や介護がある方であれば突発的な対応が必要になる場面まで、事前にすり合わせます。これは配慮というより、成果を最大化するための戦略だと思っています。
また、いきなり正社員にこだわらず、副業や業務委託、週2日からの参画など、段階的な関わり方も大切にしています。お互いを知る時間を確保しながら、その人に合った関わり方を見つけていけるようにしています。

入社前の意見反映・制度づくり
入社前に就業規則を公開し、候補者の意見を取り入れる取り組みを検討された背景や狙いは何でしょうか?
この取り組みの背景には、私自身の苦い経験があります。過去に、入社後に就業規則を見て「聞いていなかった」と感じたことがありました。面接では良い話ばかりだったのに、実際に働き始めてから初めて知る制約があった。そのときの違和感や後悔を、候補者の方には味わってほしくないと思ったんです。
だからOkojoAIでは、良いことも制約も含めて、入社前にすべてオープンにします。その上で、「この会社で、この働き方で本当にやっていけそうか」を判断してもらいたい。候補者の方からの意見は、私たちにとっても新たな気づきになります。
制度は会社が一方的に与えるものではなく、一緒に作っていくもの。入社前からその関係性を築きたいと考えています。
業務委託メンバーは、どのような形でチームに参画していますか?
業務委託の方との関わり方はさまざまです。前職の同僚に営業を手伝ってもらっていたり、大学院時代に同じ研究科にいた後輩に一部業務をお願いしていたり、フリーランスのエージェントを通じて参画してもらっているケースもあります。
いずれの場合も、「どんな契約形態か」よりも、「その人がどこで価値を発揮できるか」を重視しています。無理に社員化するのではなく、その人に合った関わり方を選べるのが、今のフェーズならではの強みだと思っています。
社員の声を制度に反映する際、どのような進め方を考えていますか?
現時点では、代表と業務委託のみの小さな組織です。だからこそ、候補者やメンバーの声を丁寧に聞くことを大切にしています。
意見をもらったときには、「なぜそう感じたのか」を深掘りし、社労士などの専門家にも相談しながら、合理性と公平性が保てるかを確認します。会社にとっても無理がなく、メンバーにとっても意味のあるものであれば、スピーディに取り入れていきたいと考えています。
スーパーフレックス・柔軟な働き方
柔軟な働き方の中で、チームの一体感や知識共有をどう保っていますか?
現在は小規模なチームでプロジェクト単位の動きが中心ですが、今後社員が増えた際には全体の一体感も重要になってくると思っています。
前職がフルリモートだったこともあり、定期的に集まる機会の価値は実感しています。3か月に1回程度、業務というより交流を目的とした場を設けることや、日常的にはSlackで専用チャンネルを作り、仕事以外の話題も気軽に共有できる環境を整えています。
「この人はどんな人なのか」が見えることが、リモート環境では特に大切だと思っています。
課題・改善点
評価制度の透明性・公平性を高めるために、今後検討していることは?
現状の規模では、私自身が全体を把握して評価できていますが、人数が増えればそれは難しくなります。上司によって評価基準がばらつくことも避けたいです。
将来的には、1on1を基盤にしつつ、複数人による評価、いわゆる360度評価のような仕組みも検討しています。そのためにも、「何を成果とするのか」をメンバーと一緒に言語化していく必要があると考えています。
今後取り組んでいきたいこと、描いている組織の未来像は?
描いているのは、「OkojoAIで働いた経験が、その人のキャリアの財産になる会社」です。OkojoAI出身であることが、次のステージで評価される。そんな存在になりたいと思っています。
研究と実装の両方を経験できる環境、多様な人材と協働する経験を通じて、ここでの時間が次につながるような組織を目指しています。
制度を判断する際、最も大切にしているポイントは何ですか?
社員の意見をすべて100%叶えることは現実的ではありません。意見同士が矛盾することもあります。その中で大切にしているのは、みんなが「まあ、これなら納得できる」と思えるバランスです。
加えて、法律や労務面の観点も欠かせません。専門家と相談しながら、実態と法令、社員の希望のバランスを取り、安心して働ける環境を整えていきたいと考えています。

読者へのメッセージ
今の働き方やキャリアに、少しでも「違和感」や「息苦しさ」を感じている方がいたら、それはあなたが弱いからでも、努力が足りないからでもないと思っています。
多くの場合、今ある制度や枠組みが、その人の人生や状況に合っていないだけです。
博士課程にいる、子育てをしている、介護をしている、年齢を重ねている——
そうした理由で「この働き方は難しい」「今はタイミングじゃない」と言われてしまう場面は、まだまだ多い。でも、本当は能力や意欲と、働き方の枠は別の話のはずです。
小さな会社には、まだできることは多くありません。
でもその分、一人ひとりと向き合い、対話し、制度を一緒につくっていくことはできます。
ここで過ごす時間が、たとえ人生の一時期だったとしても、「この経験があったから、次に進めた」と思えるような場所でありたいと考えています。
働き方に、もっと選択肢があっていい。
人生のフェーズに合わせて、働き方を変えてもいい。
そんな当たり前を、一緒に実装していけたら嬉しいです。
編集後記
関連リンク
OkojoAI
https://okojo.ai/












立浪さんのお話から一貫して感じたのは、「制度」や「仕組み」を語りながらも、その中心には常に“人”がいるということでした。
誰かに合わせてもらうのではなく、「その人が力を発揮できる形を一緒に考える」。その姿勢が、働き方や評価、組織の未来像にまで自然につながっているように感じます。
決まった正解がない時代だからこそ、対話を重ねながらつくり続ける組織のあり方。
OkojoAIの取り組みは、「働く」をもっと自分ごととして捉え直すきっかけを与えてくれるものでした。