制度・空間・文化の三位一体でつくる「しなやかな両立」~株式会社丸天産業・経営企画部長 竹内理恵さん~

オフィスの空間デザインを手掛ける株式会社丸天産業。
その新社屋には和室やおむつ台が設置された多目的トイレ、女性休憩室があり、働く社員が心地よく過ごせる環境が整えられています。
社員同士が支え合う風土も育ち、女性管理職4名のうち3名がママとして活躍。
そんな取り組みが評価され、先日「あいち女性の活躍促進サミット2025」にてあいち女性輝きカンパニー」優秀賞を受賞されました。

今回は、1歳半のお子さんを育てながら経営企画部長として活躍する竹内理恵さんに、
「制度」「空間」「文化」が相乗的に働く同社だからこそ実現できている、しなやかな働き方について伺いました。

竹内 理恵さんのプロフィール

職業:経営企画部部長
お子さんの年齢:1歳半
居住地:愛知県
勤務形態:時差出勤のフルタイム・在宅テレワーク

現在の働き方について

日によって働き方を工夫されているとのことですが、スケジュールやタスクはどのように調整されてますか?

現在は時差出勤を活用し、朝は子どもを送り出してから出社しています。といっても、今はまだ保育園が決まっていないんです。市の一時保育を利用していて、預けられる日が月に14日ほどなので、残りの6~7日は子どもと一緒で。母にも手伝ってもらうんですが、母も自営業で忙しい日があるので、その曜日は私が在宅にしたり、子連れ出社にしたりしています。
いま8名くらい部下がいるんですが、みんなが「今日は竹内さん在宅かな」「今日は子どもと一緒かな」と予測できたほうが安心だろうなと思って、できるだけ曜日でルール化しておくようにしました。

あとはお迎えですかね。
最初はお迎えも自分で行きたいと思って頑張っていたんです。16時まで預かってもらって、迎えに行く時間は休憩扱いにしていました。そのあと家に帰ってからオンラインでミーティングをしたりして…。
でも、やっぱりだんだん回らなくなってきちゃったんですよね。
今ではお迎えは母にお願いしていて、それがなかったら働けなかったと思います。

仕事と子育ての境界線をどう考えたり意識したりしていますか?

私の場合、ライフワークバランスって言葉を使うと逆に苦しくなっちゃって。育児と仕事であんまり境界線を私は設けない方が、私は私らしく働けるなってことに気づいたんですよね。
仕事ばかりしていると、子どもをおろそかにしてしまっているような気がしてしまうので、そもそも仕事の中に子どもも入れちゃったりとかしています。
18時から子ども寝かしつけるまでは、自分の子どもとの時間を大事にして。寝かしつけたらちゃんと部下の日報を見たりとか、やり残した仕事して、一日のやらなきゃいけないタスクを自分の時間割りで終わらせています。

そう考えるようになったきっかけは?

私はもともとがすごい仕事好きで、仕事中心の人間だったんですが、やっぱり子どもが生まれたのがきっかけですね。
昔は、朝は早く起きて朝仕事したりするのが好きだったんです。でも子どもが生まれてからは、私が朝早く起きたら子どもも起きちゃって、「なぜ起きるんだ!?」みたいな(笑) 逆に、保育園に行かなきゃいけないのにまだ寝てるみたいな時もあったりして、こんなに振り回されるのかって実感しました。
昔は、5時から6時までは朝仕事して、ちょっと自分時間作って、とか決めてやっていたんですけど、いまは決めることがすごいストレスですね。子どもが起きたら予定していたことが何もできないので。
だったらもうしなやかに、「子どもも起きちゃったから、もう今日の朝は子どもといっぱい遊ぼう」みたいな風にした方が自分が生きやすいなぁと思って。子どもきっかけで、だいぶその発想が変わった気がしますね。

あとは、復帰してから本屋に行くと、「レジリエンス」とか「しなやかに生きる」みたいな本を手に取るようになっていて。その時に読んだ本が「全部で100点を目指すんじゃなくて、ママで60点、会社員として60点、奥さんとして60点でも、合計したら180点になる。だから100点満点を目指さなくても、合計で180点取れればよくない?」みたいな内容だったんです。
私自身、元々なんとかなるっていう考えの人間ではあるんですけど、「あ、私もそれがいいな」って。そういう考えにした方がいいなと思ったんですよね。
会社でも管理職っていう立場で仕事してると、私のご機嫌で部下の子たちもきっと左右されちゃうし。
家の中も結局奥さんの機嫌次第じゃないですか?自分でよく思うんですよね。「あ、今日不穏だな。私、機嫌悪いな」みたいな(笑)
だから、なるべく「100点満点取れなくてもいい」って考えられるといいなと思っていますね。

制度の活用とサポート

ほかにも活用されていた制度があれば教えてください。

私の産後時期に、会社が変革期で新社屋が立ったりとかしていて。私のライフイベントと会社のイベントがちょうど重なっちゃったんですよね。
私の仕事は部下にも引き継ぎしてたんですけど、もともと仕事大好き人間だったので、会社が変わっていくっていうのに追いつけなくなるのがなんか不安になってしまったんです。
特に休みにくかったわけではなく、むしろみんな休みなさいって言ってくれて。私は直属が社長になるんですけど、社長も休んでくれってすごい言ってくれました。ただ、私自身が会社の変化についていけなくなるのが嫌でしたね。
せっかく今まで会社をいろいろ改善していって、女性も増えてきてってときに、それが私の育休っていう期間で、私が一年いないだけで今まで頑張ってきたのが崩れちゃったらどうしようとか考えちゃって。
何かいい方法はないかとネットで調べたら、国が半育休制度1を出されていたので、それを利用していました。出産後は重要な会議だけオンラインで参加していたのですが、当時の会長から「竹内君がいないと寂しいから、子どもを連れて出社してみては?」と声をかけていただき、子連れ出社という新しい働き方にチャレンジすることにしました。

ほかにも、今女性の管理職が四人いて、私を含め内三人がママなんです。
皆さん、もともと時短勤務をしてたんですけど、我が社が時差出勤を小学六年生までできるように変えたので、お二人も時差出勤を活用してフルタイムで私と同じように働いてくれています。時短が取れるってなるとみんな時短を選びがちなのかもしれないですが、我が社は時差でいいからフルで働きたいと言ってくれる人も多いですね。

子連れ出社や半育休を活用する上で、事前に準備したり工夫していたことはありますか?

まず寝かすことですかね。いかに会議の時寝かすかみたいなところはあるので、会議が始まる前にご飯いっぱい食べさせてとか授乳してみたいな努力はしていました。仕事する上では、みんなに「協力してほしい」みたいなのはお願いしていましたね。みんなが逆に声をかけてくれて。
私が会議の時に議題に関してリードしなきゃいけない立場の時は、別の人が「あ、じゃあ俺抱っこしてるよ」って、子どもを抱っこしてくれて遊んでくれたりとかして、うまく会議が回るようにやってくれて。
リアルで子どもがその場にいると、泣いちゃうこともありました。なので、会議の妨げにならないように、同じフロアにある女子休憩室とか個室ブースでオンラインで先につないでおいて、泣きそうになったらその個室ブースに入って個室で会議出るとかはやってましたね。

また、私が子連れ出社をしているのを見て、同じ管理職の男性も夏休みに娘さんを連れて出社をしていました。管理職2人で子連れ出社を実施したことで、周りの人にも「こんな働き方ができたらいいな」が広がっていたら嬉しいです

お二人の子連れ出社がきっかけで、社内に変化はありましたか?

私が小さい子どもを定期的に連れてき始めたんですが、その前にも管理職ママの一人が、夏休みの時にどうしても預け先がなくてっていうので、何回か子どもを連れてきて働いてたことはあったんです。だから私もすごくスムーズに「子どもを連れていってもいいな」って思えて。
私が半育休中に子どもを連れてきているの見て、男性社員が夏休みの時に子連れ出社するって言った時も、別に誰も何も言わず。みんなが普通に受け入れる感じでしたね。

私以外の管理職のママ二人は、ちゃんと一年育休を取っていました。
お一人の方はお子さんを預けて9時出社18時退勤で、延長保育を利用してお仕事されています。もうお一人の方はお子さんが小学生なので、時差出勤で七時半出社して四時半ぐらいまで働いて、お迎えに間に合うように帰っていたり。
私は子連れ出社とか在宅とか臨機応変に勤務しているので、周りから見ると「いろんな働き方ができるな」って思ってもらえているのかなとは思いますね。

空間づくり・文化が与える影響

オフィス内ではどのような施設がありますか?

新社屋になってから、靴を脱いでリラックスできる空間がほしいってことで和室を設置したんですが、子どもが寝転がっている時期は、この和室をよく活用していました。子どものお昼寝の際にも横になれるスペースがあり、とても助かりました。「和室って子供寝転がせられるな」っていうのは、私自身に子どもが生まれたからこその発見でしたね。
うちはもともとが働く空間をコーディネートする会社なので、お客さんに来てもらった時には、我が社のメンバーが「竹内が子供連れてきて、ここで寝転がらせてました」とか話してくれたりとかして、それはすごい良かったなって思います。
あとは、多目的トイレにはオムツ替え台も備えられているので、子連れ出社の際はフル活用しています。

オフィス内の施設が整っていることで、働く上での心理的な安心感や気持ちの余裕に変化はありましたか?

こうした設備が整っていることで、「子どもを連れてきても大丈夫」という会社からの温かいメッセージを感じられて、安心して働けています。 授乳期には胸が張って辛い時期もありましたが、女子休憩室があるおかげで、授乳はもちろん体調に合わせて休める場所があり本当に助かりました。
特に和室は、いろんな使い方がある中の一つで、私が子連れ出社でも使わせてもらってるって感じなんです。ここは昼食スペースとか託児スペースとか決まっているわけではなくて、子供がいるときは託児スペースだけど、お昼の時はみんなが昼食を食べて、ストレッチして、みたいな。そういうしなやかさも、逆に私にとってあまりプレッシャーになってないのかなと感じています。

日々の風土やコミュニケーションで「働きやすい」と感じる点があれば教えてください。

社内では「働くママの会」が開催されていて、子育て中の社員同士で悩みや工夫を共有する場になっています。時には「パパママ会」として男性社員も一緒に参加することもあり、お互いの立場を理解し合える良い機会になっていますね。
最近では、夫婦のコミュニケーションの仕方を教えてくださる先生に出会えて、来月社内で研修を行う予定なんです。
せっかく子どもを産む前は二人ですごい楽しみにしていたのに、出産きっかけで関係がうまくいかなくなってしまったりするじゃないですか。なので、「子どもが生まれるとこういうことがありますよ」ってことを、社員で模擬夫婦を作って研修をしようと思っています。
また、会長や社長が社員一人ひとりの家庭環境にも寄り添い、日頃から声をかけてくださるので、困った時に相談しやすい風土があります。社員全員が「お互いさま」の気持ちで支え合う文化があるからこそ、 安心して働ける職場だと感じています。

両立・キャリアの現在地

ご自身が育児をする立場になったことで、仕事や環境作りに活きたことはありますか?

以前から我が社は女性活躍表彰の奨励賞を愛知県からいただいていて、今回は優秀賞をいただきました。私が行っている子連れ出社や、小学生に上がるお子さんがいるご家庭にランドセルをプレゼントする制度があったりするので、県からもユニークな取り組みとして表彰されて。
うちは空間デザインや家具を扱う会社なので、今までは他社の総務さんや購買部さんとのコンタクトがメインだったんですが、これを機にダイバーシティ推進室や女性活躍推進室のような部署の方から、「丸天産業さんと交流したい」とか「御社の取り組み聞きたいです」ってお声をかけていただくことも増えましたね。
先週もフェムテックのイベントに出させてもらったんですが、それも女性活躍に取り組んでいるからっていうので依頼されて出展させていただいたんです。そういう部分は、自分の育児での経験もつながってきているなと感じます。

世の中では子どもを産まない選択をする人もいる中で、子どもを産んで働いている人って結構悩まれている人多いですよね。私も同じ経験ができたことで、より悩みの共有とか、私も復帰した時に子どものことばかり考えていたんですが、自分の胸が張るとか自分自身のことも気にしなきゃいけないんだなってことにも気付くこともできて。
私はあえて子連れ出社することで、他の人が経験しないようなことも経験できたので、それを自分だけのものにせず他の働く女性に伝えることで、その方々が所属する企業でも活かしていただけたり、さらにほかの企業さんにつながっていくといいなっていうのはすごいありますね。

課題・今後の期待について

男性社員の育児参加や両立支援について、今後どのように促進していきたいと考えていますか?

今回自分が出産や育児を経験して、だからこそ、もっとこうしたいなっていうのが結構出てきていて。男性で子どもを連れてきてくれる人もいますけど、現状では男性育休がゼロなんですよね。時代の波に乗れなかったところがあって。
ここ二、三年言われ始めている中で、最後にうちの男性社員にお子さんが生まれたのが四年前ぐらいだったので、その時はまだちょっと取りづらい感じが残っていたんです。もう今は当たり前になってきているので、次からは絶対に取ってもらいたくて。
そして、ただ取ってもらうだけにしたくないんです。取った時にどうサポートしていくかとかはすごく考えますし、せっかく取るなら夫婦仲良くいてもらいたいっていうのもありますね。

この間、育休取った後に男性が鬱になっちゃう、みたいなお話を聞いたんです。
奥さんにずっと1,2ヶ月寄り添っていて、その後仕事に復帰したときに、「奥さんの大変さはわかるけど、自分としては会社で盛り返さなきゃいけない」とか、「いつも通り働きたいけど、夜早く帰ってあげなきゃ」みたいなので、男性がつぶれちゃうって話を聞いて。私はそうはしたくないと強く思いましたね。
なるべくそういう情報はアンテナを張っておいて、男女問わずに、他の社員にも「育児もキャリアも諦めずに、丸天産業で働けて良かった」と思ってもらえるような環境づくりを進めていきたいです。

社員同士がお互いの働き方を認め合い、支え合う文化を育てるために意識していることはありますか?

会社の若い人たちに各所でリーダーになってもらっています。ちょっとしたことを上の人に言いづらいような雰囲気は作りたくないな、っていうのがあるんですよね。経営を回すのは上がやるべきだと思いますが、会社の行事とかは別に上が旗振り役やらなくてもよくて。
今、若手の四つのプロジェクトがあって、社内アップデート(会社を良くするプロジェクト)、お客様向けにイベントをやるプロジェクト社内イベントを企画してくれるチーム、うちは商社なのでパートナーさんがすごく多くて、パートナーさんと交流を増やすプロジェクトがあるので、この4つを、20代から30代前半の人たちにリーダーを任せています。
そういうことの積み重ねで、きっと発言することに対しての恥ずかしさとか、自分が言っていいのかなとかは多分なくなっていて。そういう風土が、ここからできているんじゃないかなと思っています。

読者へのメッセージ

同じようにキャリアと育児・家庭を両立しながら働こうとしている方に向けて、メッセージをお願いします。

私、ママになってから社会に対して謝ることがすごい増えたんです。子どもを連れて電車に乗るときも「すいませんすいません」て言ってしまうし、それこそ会社に連れてくる時も、会長が連れておいでって言ってくれたから連れてきたんですけど、やっぱり泣いちゃったり、部下と面談してるのに起きちゃったりとかで、結局申し訳ないなって思うことが多かったんですよね。
日常で子どものことで謝る機会が増えるのって、多分これは私だけじゃなくて、ママはみんなそうなんだろうなと思って。「子どもを産んで育てるってすごいことしてるのに、なんでそんなに不安になったりとか、申し訳ない気持ちばっかりならなきゃいけないのかな」って感じていました。
だけど意外と気にしてるのは自分だけなんですよね。私がそれで気にして子どもを連れていかなくなった時期があったんですが、そしたらみんなが「なんで最近息子くん来ないんですか?」とか、「俺が見るから連れてくればいいじゃん」って言ってくれたんです。
そうやって「すいません」って言いながら頑張ってたら、周りの人が結構見てくれて。
ちゃんと応援してくれる人はいるので、申し訳ないとかじゃなく、自分ができることって何かなって考えた方が、何でも前向きに行けるのじゃないかなと思います。
私が前向きに、できる範囲でチャレンジを続けていると、 周りにも自然と良い循環が生まれていくように感じます。

また、社内に同じ悩みを持つ人がいなくても、今は情報社会で、自分と似た環境の人や、もっと大変な状況で頑張っている人の声に触れることができますよね。だからこそ、自分の殻に閉じこもって諦めるのではなく、少しだけ視野を広げてみてほしい。意外と近くに、前に進むヒントが隠れているかもしれません。

悩んでいるのは、自分だけじゃない。一歩ずつ、自分らしく進んでいけば大丈夫です。

編集後記

はたママ編集部

今回竹内さんからお話を伺っていて、女性活躍の面を大変評価されている企業さんではありますが、「性別の垣根を越えて、社員全員が活躍できる企業」を作ろうと尽力されているのだと感じました。
丸天産業さんのような、ライフイベントでキャリアを諦めないで済む働き方ができる企業が増えるといいですね。

関連リンク

株式会社丸天産業
https://www.maruten.co.jp/

  1. 厚生労働省では「育休中の一時的・臨時的な雇用」として定義されています。
    【厚生労働省HP】:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15420.html
    ↩︎

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