「働きやすさ」だけでは少子化は止まらない――日本社会と子育て世代の未来~株式会社Revitalize 代表 片桐豪志さん~

中小企業の業績アップを支援するコンサルティング事業を手がける、株式会社Revitalize代表・片桐豪志さん。

働く人の給料が大幅に増えれば、結婚が増え、出産も増えていく。そのためには、日本人の多くが働く中小企業を成長させる必要がある」と話します。

社員や業務委託メンバーの多くも子育て世代で、会社では「出社時間自由・退勤時間自由・働く時間自由」という柔軟な働き方を導入。時間ではなく成果で評価するスタイルを取っています。

片桐さん自身も中学生、小学生、そして3歳のお子さんを育てるパパ。
今回のインタビューでは、子育てと仕事を両立するリアルな日常から、少子化が進む日本社会への危機感まで、率直にお話を伺いました。

片桐 豪志さんのプロフィール

株式会社Revitalize 代表取締役兼CEO

株式会社三菱総研研究所、デロイトトーマツ合同会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、株式会社Revitalizeを創業。Revitalizeという社名には、”日本経済の復活”という意味が込められています。
人口減少をはじめとする社会課題に正面から向き合い、その解決に取り組んでいます。

子育て世代の「自由な働き方」は、本当に自由なのか

保育園送迎と寝かしつけで終わる、実質6時間労働のリアル

社員や業務委託のメンバーも、小さい子どもがいる人がほとんどなので、出社時間自由、退勤時間自由、働く時間も自由というスタイルを取っています。時間ではなく、成果で評価しています。

朝は保育園準備で何もできなくて、送迎が終わったあとに仕事をして、夕方になったらまたお迎え。夜はご飯、お風呂、寝かしつけ。寝かしつけが終わったあとに、残った仕事を少しやる。結局、平日日中がコアタイムになります。

毎日の送迎や寝かしつけに追われながら、
「実質6時間ほどの仕事時間で、いかに成果を出すかが勝負」と語ります。

自由な働き方は確かに働きやすいです。でも、成果が出なければ苦しい。
そのため最初に、「どんな成果を求めるか」の認識合わせがすごく大事だと考えています。

時間ではなく成果で評価する働き方が、子育て世代に必要な理由

小さい子どもがいると、予定通りには進みません。
急に熱が出ることもありますし、イヤイヤ期だと朝の着替えだけで30分かかることもあります。

「9時から18時まで席にいること」を前提とした働き方では、子育て世代にとって大きな負担になってしまいます。かといって、成果だけを過度に求める環境では、今度は精神的なプレッシャーが強くなり、苦しくなってしまう。

時間が自由だからこそ、「どこまでやれば成果なのか」を会社側と本人側でしっかり擦り合わせる必要があります。仕事と家庭、この2つがその人にとってバランスが取りやすいことが重要だと考えています。

仕事を頑張りたい時期もあれば、子どもに寄せたい時期もある。だからこそ、定期的に話し合いの場を設け、「今、その人にとって最も良い仕事と家庭のバランスはどこにあるのか」を一緒に考えながら調整することを意識しています。

「少子化対策70兆円」でも、なぜ出生数は減り続けるのか

子育て支援は増えているのに、将来への安心が足りない

日本では20年以上、少子化対策予算が増え続けています。
累計すると70兆円規模とも言われています。でも、その間に出生数はどんどん減っている。
「こんなに頑張っているのに、なぜ結果が悪化しているのか」をもっと真剣に考えるべきだと思います。

育休推進、ワークライフバランス、リモートワーク、保育サービスなど、社会全体としては環境は整ってきていると思うんです。それでも子どもの数は減り続けている。

もちろん、制度は必要です。でも、制度だけでは不安はなくならないんですよね。
今だけではなく、「10年後、20年後も生活していけるのか」という安心感が持てないと、結婚や子育てには踏み切りにくいと考えています。

「結婚できない社会」が、少子化を加速させている

私は、「結婚が減っていること」が少子化の大きな原因だと捉えています。
結婚した夫婦からは子どもはまだ約2人生まれますが、そもそも結婚する人が半分になっている。日本では、結婚した女性の多くが子どもを産みます。一方で、結婚率自体は下がり続けています。

そして、結婚率は男性の年収とかなり強い相関があります。男性の年収は、この30年間ほとんど上がっていません。一方で、社会保険料、消費税、物価、ガソリン代、通信費など、生活コストは増え続けています。

つまり、実質的な手取りは減っている。そうなると、「結婚して家庭を持つ」ということへのハードルが上がってしまいます。

少子化対策というと、「今子どもがいる家庭への支援」に目が向きがちです。
しかし、私はその前段階にある「結婚したいと思える経済状況をつくること」が、より本質的な課題ではないかと考えています。

“働きやすさ”だけでは、日本社会は変わらない

なぜ中小企業の成長が、日本の未来を左右するのか


少子化対策の鍵は、「企業の成長」と「賃金の上昇」にあると考えています。
給与を上げるためには、その原資となる利益が必要です。そして利益を生み出すためには、まず売上を伸ばさなければなりません。

営業を強くする、新規事業をやる、海外展開をする。企業が本気で成長していく必要があります。その中でも、私が事業として、特に中小企業に力を入れているのは、日本人の多くが中小企業で働いているからです。

日本経済を支える中小企業が成長し、そこで働く人々の所得が着実に増えていくことが、将来的な結婚や子育てへの安心感につながり、結果として出生率の改善にも寄与すると考えています。

一方で、数%程度の賃上げだけでは物価上昇の影響を十分に吸収できないのが現実です。
社会全体に大きな変化をもたらすためには、企業が2倍、3倍と飛躍的に成長し、その成果を働く人へ還元できる環境をつくることが重要だと思います。

地方の衰退を見てきたからこそ、「地域の価値」を磨きたい

私は札幌出身で、旭川にも5年ほど住んでいました。
東京に出てから、地元へ帰るたびに「地方の衰退」を強く感じていました。昔は賑わっていた街が、どんどん空洞化していくんです。

地域を活性化する方法って、ショッピングセンター誘致や工場誘致など色々ありますが、どれも決定打にはなっていない。その中で「地域の眠っている価値をビジネスとして磨き上げること」が必要だと感じています。

共著、『事業プロデューサーという呼び水ー持続可能な地域経済のカタチー』(静岡新聞社)のなかで触れているのですが、地方には、まだ活かしきれていない技術や文化、人材がたくさんあります。
それらを事業として成長させていくことで、地域に仕事が生まれ、人が残り、生活が続いていく。そういう循環を実現したいです。

「毎日を乗り切るだけで精一杯」だからこそ、未来を考えたい

子どもたちが生きる、人口減少後の日本

毎日の送迎や食事の準備、寝かしつけなど、子育てと仕事を両立する日々は本当に大変だと思います。私自身も、毎日を乗り切るだけで精一杯だと感じることが少なくありません。

でも、ときどき「子どもが大人になる頃、日本社会はどうなっているだろう」と考えることがあります

現在の推計では、私の子どもが社会人になる頃には、日本の人口は1億人を下回ると予想されています。GDPランキングも今より下がっているでしょうし、日本はこれからも縮小していく可能性が高いです。

失われた30年が、このまま40年、50年と続いていくかもしれない。そんな危機感はあります。

「変えられない社会」ではなく、「変える側」に立つという選択

社会は急には変わりません。でも、何もしないよりは、行動した方がいいと思うんです。
子どもたちにも、「社会は変えられない」と諦めるのではなく、「変える側」に立つ人間になってほしいですね。

私は、中小企業の成長を支援することで、日本全体を少しでも良くしたいと願っています。

もちろん、毎日の子育てだけでも十分に大変です。これ以上頑張れと言われても、簡単なことではありません。それでも、自分の仕事を通じて企業の成長や賃金向上に少しでも貢献できれば、それが未来を変えるきっかけになるかもしれない。そんな思いで日々取り組んでいます。

そうした小さな積み重ねが、将来の日本にとっての「反転の芽」になると信じています。

編集後記

はたさん

「毎日を乗り切るだけで精一杯」。

今回のインタビューでは、保育園の送迎や寝かしつけといった子育てのリアルから、これからの働き方、少子化と日本社会の未来まで、幅広いお話を伺いました。

制度や支援が増える一方で、「将来への不安」や「限られた時間で成果を求められる難しさ」は、多くの子育て世代が感じていることかもしれません。

社会が大きく変化していく今、私たちは「何を信じて、どう働くのか」そして、「どんな未来を子どもたちに残したいのか」そんな問いを改めて考えさせられるインタビューでした。

関連リンク

株式会社Revitalize
https://revitalizejapan.com/

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