子どもに「人生を豊かに、自然体で楽しんでいる女性」として感じてもらいたい

 「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを掲げ、進化の早いインターネット産業の中、「人材力」「技術力」「創出力」を強みに、「変化対応力」を培い創業来事業拡大を続けてきた、サイバーエージェント
こちらでは、「挑戦と安心はセット」という考えの元、社員が自身のキャリアや働く環境に安心感を持ち、長く働き続けられる人事制度や福利厚生を取り入れています。
今回は、社員の働きやすさを追求した制度について広報の岩田さんと制度を利用してワーママ社員として働く松村さんにインタビューさせていただきました。

事業内容、制度について

➖御社の事業内容を教えてください。
インターネット産業に軸足をおき、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業を中心に事業を展開しています。

株式会社サイバーエージェント

 
➖そのほか働きやすい環境への取り組み、それに対する社内での反応、また、現在感じている課題がありましたら教えてください。
当社では、「挑戦と安心はセット」という考えのもと、社員が自身のキャリアや働く環境に安心感を持ち、長く働き続けられる人事制度や福利厚生を取り入れています。
 
➖「挑戦と安心はセット」だという考え方がとても印象的です。創業から24年ですが、徐々に変化していったのでしょうか?それとも劇的に変化したのでしょうか。変遷を教えていただきたいです。
転機となったのは2003年に「人事を強化する」という決定を行ったことです。当社のビジョン「21世紀を代表する会社を創る」もこの時に決めました。創業当初から新卒採用など行ってはいましたが、当時は成果主義を徹底していたために個人プレーが目立つようになって、組織の雰囲気は決して良いとは言えない状況でした。優秀な人材が入社しても退職に至ってしまう…ということも少なくなく、退職率30%という時代もあったのです。そこで、会社として継続的な成長を実現するために、人事を強化するという経営陣の判断がなされました。そこから全社的な価値観の統一を図るために、我々が大切にしたい価値観を明文化したり、新規事業プランコンテストや数々の人事制度が生まれました。
当社はこれまで、変化に対応しながら新しい事業を創出し続けることで、成長を続けてきました。失敗を恐れて挑戦を躊躇すれば、変化の速いインターネット産業ではあっという間に取り残されてしまいます。そこで「挑戦と安心はセット」という考え方のもと制度を充実させることで、社員が安心して大きな挑戦を続けられるカルチャーを醸成しています。

女性が長く働ける環境のための制度

➖同様に女性に関する制度も整えられたのでしょうか?
2014年に女性活躍促進制度 macalonパッケージが作られました。サイバーエージェントの独自の経営会議である「あした会議」(※の場で、育児と仕事を両立させたい女性を支援する制度を作ってはどうか、という提案があったことがきっかけです。ちょうどその頃、社会的にも政府が女性活躍について打ち出しており、社内でもママ社員が100人を超えたタイミングで、それまで個別に対応していたものを制度化しようという話になりました。

(※)年に一回経営陣が現場の社員とチームを組み、サイバーエージェントの未来(あした)につながる新規事業案や課題解決案を社長の藤田氏にプレゼンしてコンテスト形式で競う経営会議
 

■女性活躍促進制度 macalonパッケージ

女性が出産・育児を経ても働き続けられる職場環境の向上を目指して8つの制度をパッケージ化した独自制度。
(参考)https://www.cyberagent.co.jp/way/info/detail/id=26074
・エフ休
・妊活休暇
・妊活コンシェル
・キッズ在宅
・キッズデイ休暇
・認可外保育園補助
・おちか区ランチ
・パパママ報

 
➖「エフ休」という言葉がとても良いと思いました。直接的な言葉の制度では取得はしづらいですよね…。
あした会議での藤田からのフィードバックをもとに、「妊活」を軸に人事部で制度の設計を行うことになったのですが、非常にセンシティブな内容なので、単に「妊活休暇」を設けるだけでは不十分ではないかという議論になったのです。実際、当時「生理休暇」もありましたが、上司への言い出しづらさを理由に取得しづらいと感じている社員もいました。
そこで、生理休暇や妊活休暇、通常の有給休暇も含め、女性社員が取得する休暇の呼び方を「エフ休」とすることで利用用途がわからないようにし、取得のしづらさに配慮しています。
 
また様々な制度をパッケージ化したことで、子どもを産む・産まないだけでなく、結婚する・しない、など人生の選択肢が広がっている中で、あらゆる立場の女性を応援する制度にすることができました。
実際制度を利用する社員の声として、「会社がプライベートを含め応援してくれている実感があるから、仕事ももっと頑張れます!」といった声も挙がっています。

緊急事態宣言解除以降の働き方

2020年3月末に全社員フルリモートに移行しました。緊急事態宣言が明けた6月からは全従業員を対象に特定の曜日はリモートワークとする「リモデイ」の運用を開始し、オフィス出勤とリモートワークのハイブリッド型の働き方を取り入れています。
移動を伴う社内会議や、大人数の会議は効率の良いビデオ会議に変更する、従業員が心身をリフレッシュする機会を増やすなどリモートワークの利点と、チームワークや活気の良さを両立させるための施策をとっています。

松村さんのキャリア・働き方について

松村 咲子さんのプロフィール

職業:プロダクトマネージャー
お子さんの年齢:14歳/10歳(2022年1月時点)
居住地:東京都

➖入社してから現在に至るまで、仕事内容に変化はあったのでしょうか?
元々はコピーライターとして入社しましたが、所属したインターネット広告事業本部では、クリエイティブを強化するという事業変化に伴い、約7年間クリエイティブディレクターとして従事しました。この間に2人出産しました。
 
➖その頃御社では『女性活躍促進制度 macalonパッケージ』は発足していない時期ですよね。当時はどういう状況だったのでしょうか?
私が1人目を出産したのが2007年でした。当時は育休を取得して復帰しよう、という人は私が知る限り、社内にいなかったかも…。1人の先輩が出産して復帰したということを聞いていたので、相談に乗ってもらいました。当時は法令通りの産休・育休制度があるだけでしたが、復帰したいという意思があるなら、働き方を一緒に考えようと提案していただき、私の気持ちを優先し、やりたいことに寄り添っていただく形で、上長に相談ができるという状態でした。
 
➖2007年当時、ママ社員は少なかったということでしょうか?
全社でも私を含めて数名しかいなかった認識です。
 
➖現在ママ社員はどれくらいいますか?macalonパッケージが促進されたことでママやパパ社員が増加したのでしょうか。
岩田:現在は大体4人に1人がママ社員ですね。制度が充実したり社内の事例が増えたことで、選択肢が増えて、退職をせずに働き続けることを選ぶ社員が増えたということもあるのかもしれません。
 
➖2011年に次のお子さんを出産されていますが、4年でママ社員を取り巻く環境はさらに変化しましたか?
2011年頃になると、ママ社員だけでなくパパ社員の数も増えてきました。最初の出産の時は不透明でわからないことばかりだったのですが、2人目のときは先のロードマップを思い描きやすかったですね。
 
➖育休や産休中のブランクはありましたか?その間、どんな想いを抱いていましたか?
1回目の育休明けのときにはブランクというより、漠然とした不安を感じていたところは正直ありましたね。というのも、初めての育児で右も左も分からないのに、小さな子どもを抱えながら会社で働き続けること自体が私にできるのか、そういった働き方でも必要としてもらえるのか、周りに迷惑をかけるだけの存在にならないかと、不安を感じていました。当時世の中では「育休切り」という言葉がニュースで流れていたので余計に感じていたのかもしれません。
それでも、私にとって大切なのは間違いなく娘の存在でしたので、思い切って「私は毎日17時に帰ります」と上司や同僚に公言(当時の通常就業時間は18時まで)。会社にいる時間は、目の前の仕事に全力を注ぎ、同僚に信頼される動きをすることや、誰かに頼ってもらえる働き方をしようと努めていました。
それでも、例えば急な娘の発熱で呼び出されたり、思うように働けないこともあり、一瞬で頭が真っ白になることもありましたが、そんな私に対しての周りの反応で覚えている記憶は、上司や同僚がかけてくれる言葉がいつでも優しかったこと。まだ子どもを持ったことがない人ばかりだったのに、そういうことではなく、一人の人間の人生に寄り添って思いやってくれる人が多かったと感じます。
子どもを抱えながら働く不安を解消するには、時間はかかりましたが、一緒に働くチームメンバーのおかげでゆっくり解消されていきました。
この経験もあり、2人目妊娠・出産の時は漠然とした不安は一切なく、何かあれば周りに相談できる場があるという安心感がありましたね。

やりたいことを実現するために、効率化を常に考えている

➖復帰後に苦労したことはどんなことですか?
時間の使い方を試行錯誤しました。残業はせず8時間以内でどう効率化するかということに焦点を当てていました。ミッションを決まった時間内で効率的にこなし、それ以外の時間は家族に充てようと決めていました。
具体的には仕事の翌日・翌週のタスクを必ず可視化し、それぞれの優先度・緊急度も明確にしていました。急な対応があっても、優先度の低いものを後回しにすることを躊躇わずにできますし、緊急度が高いものは周りを巻き込むことを想定し進めるので、急な子どもからの呼び出しがあっても、対応しなければならないミニマムが常にイメージできる状態を作りました。これをやるだけで、あれこれと迷ったり、無駄なこと考える時間がなくせるので、心身的にも楽に感じましたね。
また仕事も頑張りながらも子どもと過ごす時間を創出するには、家事の時間を効率化するしかない、という結論に至りました。そこはとても単純で、食洗機や乾燥機、ロボット掃除機を購入することから始めました(笑)。
やりたいことの実現を最優先にするために、何かをやめたり効率化したり…ということを仕事とプライベートの両方で考えていましたね。時間は有限ですし、「ママも完璧じゃないから助けてー!」と家族には甘えていました。そのため娘2人は3歳から自分で保育園や学校の上履きを洗っています(笑)!上履きなら少しぐらい汚れていても問題ないですし、子どもができることを少しずつ増やして、できることはどんどん任せていくというルールでやってきました。
 

働く姿を子どもが見るということ

仕事をしている松村さん


➖自宅で仕事をしていると、お子さんたちの松村さんを見る目は変わってきたのではないでしょうか?
私の見え方は全く変わったと思います。今までは「お母さん」だった存在が、「働く女性」として私を捉えているように感じますね。
「ママって仕事する時ってそういう顔をするんだ」と、新しい気づきがあったようで、一人の大人としてすごいと思ってくれているところがあるようです。働いている時間は全く違う、ということを子どもたちがしっかり理解してくれて、働いている私に対して配慮してくれるようになりました。そういう姿に成長を見ることができたのは、リモートワークならではの良さだと思います。
 
➖妊娠・出産から復職というご自身の経験が、今のお仕事にどのような影響を与えていますか?
できることへの自信につながったのと、無理しすぎず、自然体で色々なことを受け入れ、チャレンジすることができるようになりました。現在、私は日本最大級のブログサービスを運営する「Ameba」でPMとして働いているのですが、Amebaのユーザーはママ世代が多く、自分自身の母親としての経験が開発にも生かされていると感じることがあります。たとえば担当していたAmeba公式アフィリエイト機能の「Ameba Pick」でも、「自分だったら使うか」という視点をいつも大切にしています。私自身をロールモデルにすることも多いです。その経験をもとに今はAmebaで新規事業の立ち上げにチャレンジしています。


➖今後どんな自分になりたいと思っていますか
子どもたちにとって、素敵だと言ってもらえるような女性になりたいです。2人とも女の子ですので、よく人を洞察していますから。
彼女たちは直感的にも感情的にも、多くのことを感じ取っていると思いますが、いつも忙しく、必死に頑張っている女性としての一面だけでなく、人生を豊かに、自然体で楽しんでいる女性として総合的に、感じてもらえるような女性でいたいですね。
 

編集後記

ライター・O山

女性活躍促進制度 macalonのひとつの「エフ休」の表現がとても良いと感じました。具体的な名称が明示されていると、人によっては取得が難しい。休暇制度を設けるだけではなく、取得における心理的ハードルを下げる工夫をセットで考えている点が、他の企業にとっても参考になるのではないでしょうか。
子どもが思春期に差し掛かった時、松村さんのような関係性を子どもと築きたいので、これからは自分の働く姿を見せたいです!

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